2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of MS therapy targeting Nqo1
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21K07088
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
木村 彰宏 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 室長 (20533318)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | NQO1 / Th17 / 多発性硬化症 / 活性酸素 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請者らはこれまでに抗酸化酵素NQO1がTh17細胞において特異的に誘導されていることを発見していた。NQO1欠損Th17細胞ではIL-17産生が低下し、逆にIL-10産生が更新していたことから、NQO1欠損Th17細胞におけるIL-17産生の減弱がIL-10の高産生によるものなのかを調べるためにNQO1/IL-10二重欠損マウスを作成した。NQO1/IL-10二重欠損Th17細胞ではNQO1欠損Th17細胞で見られたIL-17産生の減弱がキャンセルされていた。このことからNQO1はTh17細胞においてIL-10の産生を抑制することで、IL-17産生を促進させていることが判明した。 さらに、NQO1欠損マウスではコントロールマウスに対してEAEが顕著に抑制されていたが、NQO1/IL-10二重欠損マウスではこの抑制がキャンセルされEAEの症状が悪化した。さらにEAEを誘導した際、NQO1欠損マウスでは血中IL-17量は低値を示したが、NQO1/IL-10二重欠損マウスでは血中IL-17量は高くなっていた。この結果からin vivoにおいてもNQO1欠損におけるIL-10産生の亢進がIL-17産生を抑制し、EAEを抑制していることが示唆された。NQO1は抗酸化酵素であることから、NQO1欠損T細胞における活性酸素(ROS)の産生量を調べた結果、コントロール細胞に比べてNQO1欠損Th17細胞ではROS産生量が増加していた。このことからNQO1欠損Th17細胞におけるIL-10産生は活性酸素により促進されていることが予想された。そこでNQO1欠損Th17細胞に活性酸素除去試薬(NAC)を添加するとIL-10産生がコントロールTh17細胞と同程度まで抑制された。これらの結果から、NQO1欠損Th17細胞におけるIL-10産生の亢進はROSに依存していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NQO1欠損T細胞におけるIL-17産生の更新がIL-10産生増加によるものであることが、NQO1/IL-10二重欠損細胞およびIL-10中和抗体の実験により明らかになった。また、活性酸素阻害剤で処理することにより、NQO1欠損T細胞におけるIL-10産生の促進が阻害されたことから、活性酸素がTh17細胞においてIL-10産生に大きく関与していることも判明した。以上のことから、NQO1はTh17細胞分化時に誘導され、活性酸素を除去することで、IL-10産生を抑制し、結果としてIL-17産生の促進に関与していることが判明し、Th17細胞の新たな分化制御機構が明らかになった。 in vivoにおいても、NQO1欠損マウスではコントロールマウスに対してEAEが顕著に抑制されていたが、NQO1/IL-10二重欠損マウスではこの抑制がキャンセルされEAEの症状が悪化することが判明した。さらにEAEを誘導した際、NQO1欠損マウスでは血中IL-17量は低値を示したが、NQO1/IL-10二重欠損マウスでは血中IL-17量は高くなっていた。この結果からin vivoにおいてもNQO1欠損におけるIL-10産生の亢進がIL-17産生を抑制し、EAEを抑制していることが示され、自己免疫疾患とNQo1の関係が明らかにされた。
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Strategy for Future Research Activity |
T細胞におけるNqo1の役割とMSとの関連を明らかにするために、T細胞、B細胞、NK-T細胞を欠損するRAG-2 KOマウスにNqo1欠損T細胞を移入し、WTのT細胞を移入したマウス群とともにEAEを誘導し、クリニカルスコアや抹消Th17細胞の割合、血中IL-17濃度を比較することで、T細胞固有のNqo1とEAE誘導との関連を明らかにする。Rag2 KOマウスにWT、Nqo1欠損T細胞を移入してEAEを誘導した際に、NACをさらに投与することでEAEに対する酸化ストレスの影響を調べる。さらに、T細胞特異的にNqo1を欠損させたcKOマウスやNqo1/IL-10ダブルcKOマウスを用いてEAEを誘導しコントロール群と比較することで、T細胞由来Nqo1とそれにより制御されているIL-10がEAEにどのように関与しているのかを明らかにする。 また同時に前述したOKD48マウスとRag2 KOマウスを交配し、同様にWTまたはNqo1欠損T細胞を移入しEAEを誘導することで、EAE誘導時において酸化ストレスを受けている組織や細胞を時間軸、空間軸の両面から解析していく。これらの実験を通してMSにおいてT細胞由来Nqo1がどのようにして酸化ストレスを制御しMSの発症や増悪に関与しているのかを解明していく。さらにMS患者の血清を使って、血清中のNqo1活性を健常人と比較することで、ヒトにおいてもNqo1がMSに関与していることを明らかにしていく。 最終的に、NQO1阻害剤を用いてEAEを治療できるか検証していく予定である。
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