2021 Fiscal Year Research-status Report
Vasohibin-2による横紋筋肉腫の悪性化制御機構の解明と新規治療法の開発
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21K07089
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 康弘 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 助教 (60332277)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Vasohibin-2 / VASH2 / SVBP / 横紋筋肉腫 / がん悪性化 / チューブリン脱チロシン化酵素 / 液ー液相分離 / 微小菅翻訳後修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
バキュロウイルス発現系でGFP融合VASH2-SVBP複合体とVASH1-SVBP複合体蛋白を精製し、液-液相分離現象が生じるかどうか確認したところ、水溶性の高分子ポリマーであるポリエチレングリコールを含むバッファー中でVASH2-SVBP複合体とVASH1-SVBP複合体がそれぞれ液滴を形成し相分離する様子が観察され、この液滴の形成は塩濃度によって影響を受けることを確認した。加えて、VASHのN末とC末にある天然変性領域の欠損変異体についても相分離現象が生じることを新たに見出した。超遠心による微小菅との共沈実験を行ったところ、精製VASH-SVBP複合体と重合微小菅との結合が確認された。NanoLucルシフェラーゼ断片と高い親和性のあるHiBiTタグをC末端に付与したVASH2とSVBPを細胞に強制発現させ、培養上清(細胞外分泌)と細胞内に分けてNanoLucの活性を測定することによって、VASH2-SVBP複合体の細胞外分泌効率を定量的に評価する実験系を新たに確立した。in vitro ライブイメージングによって染色体分配や細胞遊走を追跡するために、GFPまたはmCherryと融合したヒストンH2Bを安定導入した横紋筋肉腫細胞株RH30を作製した。また、マウスへの移植実験において、深部での移植細胞を高感度に検出するために、ホタルルシフェラーゼより活性が高い人工酵素Akalucを安定導入したRH30株を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はGFP融合VASH2-SVBP複合体とVASH1-SVBP複合体蛋白を用い、液―液相分離現象を検証する実験系を新たに構築すると共に、重合微小菅との結合性や細胞外分泌を定量的に解析する手法を確立した。脱チロシン化酵素の機能発現と細胞外分泌におけるVASH2-SVBP 複合体の蛋白質動態を解析するために重要な成果を得ることができた。また、ヒストンH2BまたはAkalucを安定導入した横紋筋肉腫細胞株を作製し、今後のライブイメージングやマウス移植実験に用いることでVASH2による横紋筋肉腫の悪性化メカニズムについてin vitro とin vivo両方の解析を行うことが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)VASH2-SVBP複合体の蛋白質動態の解析:液-液相分離現象を引き起こすために必要とされるVASH2のアミノ酸領域を調べると共に、VASH1についても解析を行い、VASH2との相違を解析する。腫瘍微小環境に関連する低酸素・低栄養・低pH 条件下でのVASH2-SVBPの局在・細胞外分泌・脱チロシン化αチューブリへの影響を解析する。 (2)横紋筋肉腫の悪性形質におけるVASH2 の機能解析:横紋筋肉腫細胞株を用い、VASH2 のノックダウンによって染色体分配異常・微小菅ダイナミズム・遊走・薬剤耐性への影響を調べる。精製VASH2-SVBP 複合体を用い細胞外刺激性に線維芽細胞の形質転換や血管内皮細胞の細胞機能に影響するかどうか検証する。ルシフェラーゼを安定導入した横紋筋肉腫細胞株をヌードマウスまたはSCIDマウスに皮下移植し、VASH2 をノックアウトあるいはノックダウンすることで、経時的に腫瘍の大きさや転移に変化が認められるかどうかモニタリングする。腫瘍の組織切片を作製し、細胞増殖・組織浸潤・転移、腫瘍間質の変化を免疫染色にて解析する。 (3)VASH2 を標的とするアンチセンスオリゴ ・siRNA・阻害ペプチドによる横紋筋肉腫の悪性形質に対する抑制効果の検証:(1)と(2)の結果を踏まえ、VASH2あるいはS VB Pのドミナントネガティブ変異体や阻害ペプチドをデザインし、その阻害効果について横紋筋肉腫細胞株を用いて検証する。
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