2021 Fiscal Year Research-status Report
乳がん細胞内のHSD11β1によるホルモン産生が転移を亢進する分子機構の解明
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21K07113
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中山 浄二 京都大学, 薬学研究科, 特定研究員 (70807221)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳がん / 転移 / EMT / HSD11b1 |
Outline of Annual Research Achievements |
前研究でがん細胞転移抑制効果を有する化合物として同定されたAdrenosteroneの標的分子であるストレスホルモン産生酵素 HSD11β1のトランスレーショナル研究を遂行した。 令和3年度の成果として、HSD11β1は酵素活性依存的にヒト乳腺細胞にEMTを誘導していたので、乳がん細胞内でHSD11β1が触媒している基質及びその代謝産物を同定した。HSD11β1はAdrenosterone11-keto progesterone (11-keto-P)を基質として 11-hydroxy progesterone(以下 11-OHP)を産生することを明らかにした。また、11-OHP はヒト乳腺上皮細胞にEMTを誘導し、細胞移動及び浸潤を亢進することも明らかにした。 次に、11-OHPが EMTを惹起する分子機構を一部解明した。11-OHPはステロイドと同様の化学構造を有していることから、11-OHPは任意の核内受容体に結合し、その核内受容体の転写活性を賦与していると推測された。そこで、乳腺上皮細胞において核内受容体47種類をそれぞれノックダウン後、HSD11β1発現時にEMT誘導に必須となる核内受容体を選別した。するとPPAR alphaのノックダウンはHSD11β1発現により惹起されるEMTが起こらなかった。また、同遺伝子のノックダウンはHSD11β1の発現依存的に間葉系を維持している乳がん細胞を上皮系の性質に戻した。 さらに、HSD11β1 の選択的競合阻害剤である Adrenosterone が乳がん細胞の転移を抑制するかをマウスがん転移モデルを用い検証した。MDA-MB-231細胞を免疫不全マウスの乳腺に同所移植したところ、Adrenosteroneを投薬したマウス群では肺、肝臓及びリンパ節への転移性腫瘍の形成を著しく抑制することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の検証は技術的な問題等に直面して検証が完遂していない。例えば、HSD11β1は11-keto-Pを基質として11-OHPを産生することでEMTを誘導していることは明らかになったが、基質である11-keto-Pはどの代謝経路から産生されているのかは不明である。そこで、他のステロイドと同様に11-keto-Pもコレステロールから産生されていると考え、炭素同位体(13C)を含有したコレステロールをHSD11β1を発現する乳がん細胞株に取り込ませ、その同位体を含有した 11-keto-P 及び 11-OHP が産生されるかを質量分析機を用い検証したところ、現在までに検出出来ていない。現在、条件検討の段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
乳がん細胞内でHSD11β1が触媒している基質及びその代謝産物を同定に関しては、Her2 陽性及び Triple negative の乳がん臨床検体の70%以上でHSD11β1の発現がみられるので、それら臨床検体においても11-OHPが産生されているのか検証する。 また、11-OHPががん転移を亢進するのかも検証する。具体的には11-OHPで低転移性乳がん細胞を刺激した後、マウスに移植し、がん転移を亢進するのかを検証する。11-OHPが EMTを惹起する分子機構の解明に関しては、PPAR alphaが11-OHP存在依存的にTwist1 や Snail1 などの EMT誘導性転写因子のプロモーター領域に結合するかをクロマチン免疫沈降(ChIP)を用い検証する。 さらに、HSD11β1 阻害剤の乳がん細胞の転移臓器内での増殖抑制効果を検証する。HSD11β1のがん進展に関与する分子機構は EMT だけではなく、原発巣及び遠隔転移組織における増殖にも影響を及し得ることが推測される。そこで、MDA-MB-231細胞を免疫不全マウスの尾部静脈より移植後、Adrenosteroneは乳がん細胞の転移臓器内での増殖に対し抑制効果を有しているか検証する。
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Causes of Carryover |
物品費に関しては、今年度に計画していた実験で使用する試薬の消耗量が予定よりも少く完遂することが出来たので、出費が予定していた額より小額となっている。残金は来年度の試薬の購入に充てる。 旅費に関しては、学会等の参加が全てweb参加となったので移動や宿泊に掛かる出費がなくなったため、出費が予定していた額より小額となっている。残金は来年度の学会等の参加費用に充てる。
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[Journal Article] HSD11β1 promotes EMT-mediated breast cancer metastasis2021
Author(s)
Joji Nakayama, Ami Maruyama, Takamasa Ishikawa, Tatsunori Nishimura, Sanae Yamanaka, Noriko Gotoh, Chisako Yamauchi, Tatsuya Onishi, Tomoyoshi Soga, Satoshi Fujii, and Hideki Makinoshima
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Journal Title
bioRxiv
Volume: -
Pages: -
DOI
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