2021 Fiscal Year Research-status Report
新規家族性乳がん感受性遺伝子の同定と既知原因遺伝子のVUSリスク評価法の確立
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21K07125
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
松下 洋輔 徳島大学, 先端酵素学研究所, 助教 (70634450)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦の乳がん罹患率は年々増加傾向にあり, 11人に1人の女性が生涯で乳がんにかかるとされている. そのうち家族性乳がんは全乳がんの約15%と推定され, この約1/3, すなわち全乳がんの約5%が遺伝性乳がんと示唆されている. これまで家族性乳がんの原因遺伝子として同定されたBRCA1/2遺伝子に生殖細胞系列変異を有する遺伝性乳癌・卵巣癌症候群 (HBOC) の患者の乳がんの生涯リスクは40-80%と非常に高いことが明らかになっている. しかしながら, 現在同定されているBRCA1/2以外の高度易罹患性原因遺伝子による遺伝性乳がん卵巣がんの頻度は, HBOCと比べても極めて少なく, 全体の約50%が未同定の易罹患性遺伝子と推測されている. 研究代表者は乳がん24家系84人の生殖細胞系列の全エキソーム (WES) 解析から, 罹患者と非罹患者での分離, 家系内集積性を解析し, 25遺伝子までの絞り込みを実施した. さらにこれら遺伝子群のうち, データベースを用いたリスク予測や, がんにおける各遺伝子の機能を解析することで, 6つの遺伝子を見出した. また, 本解析で認められた変異には, NCCNガイドラインで単一検査遺伝子として明記されている既知遺伝子群も含まれていたが, そのうちいくつかはリスク不明な遺伝子変異 (VUS) であったことから, 本年度はVUSのリスク評価も行った. WES解析から, BRCA1変異は5家系に認められ, そのうち3家系で検出されたバリアントはVUSであった. BRCA1は様々な機能を有しているが, 中でもDNA二本鎖切断の修復機構の一つである相同組換え修復 (HDR) に中心的な役割を果たすことが知られている. そのため, これらのVUSのHDRに対する影響を評価したところ, 3つのVUSはいずれもHDR活性を保持していることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳がん24家系84人の生殖細胞系列の全エキソーム (WES) 解析から, 罹患者と非罹患者での分離, 家系内集積性を解析し, 25遺伝子までの絞り込みを実施した. さらにこれら遺伝子群のうち, データベースを用いたリスク予測や, がんにおける各遺伝子の機能を解析することで, single nucleotide variantとして2つ, indelとして4つ, 合計6つのがん抑制遺伝子を見出している. この遺伝子の中で, frameshift deletionを認めたGeneAについて機能解析を行った. その結果, GeneAをノックダウンすると, 細胞増殖が亢進するのに対し, GeneAの野生型を過剰発現させると細胞増殖が抑制された. しかしながら, GeneAの変異体を過剰発現させると細胞増殖はコントロールと同程度であり, 抑制能が消失していることが明らかにできた. さらに現在はGeneAの機能に対する影響を検討しているところで, 感受性遺伝子としての妥当性について順調に解析が進んできている. また, BRCA1のHDR活性を解析することで, 本解析で認めたVUSのリスク評価も実施できたので, 概ね順調に進展していると考えた.
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Strategy for Future Research Activity |
新規乳がん感受性遺伝子バリアントの機能解析として, 候補遺伝子のがんにおける機能を既存の報告から検証し, その機能に対し, 野生型と変異体の過剰発現系を樹立して比較検討を続けていく. また, BRCA1以外の既知遺伝子群のVUSリスク評価についても検討していくとともに, BRCA1については, HDRだけでなくユビキチンリガーゼやその他様々な機能を有しているため, 今後はこれらこれらも総合的に評価することで, 新たな知見を提供するとともに, 病的バリアントでないと判断された家系については, 新規感受性遺伝子の探索に加えることで, 再解析を実施する.
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Causes of Carryover |
今年度もサンプリングを継続していたものの, コロナ禍では非罹患者が病院へ通院することを避ける傾向にあったために, 新しい家系サンプリングが難しく, 新たなWES解析ができなかったこと. また, 同じくコロナ禍で旅費の使用がなかったために, 次年度使用額が生じる結果となった. 翌年度分として請求した研究費と合わせて, 新たなWESや新規感受性遺伝子の同定のために使用していく予定である.
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