2021 Fiscal Year Research-status Report
アクチン動態が制御するがん幹細胞の薬剤耐性機構の解明と治療戦略の構築
Project/Area Number |
21K07131
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
信末 博行 藤田医科大学, その他部局等, 講師 (90525685)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | がん幹細胞 / 薬剤耐性 / アクチン細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍組織は不均一な細胞集団により構成されており、特にがん幹細胞は化学療法抵抗性(薬剤耐性)を有しており、その特性はがんの根治を困難にするとともに、がん再発の主たる要因となっている。したがって、がん幹細胞を標的とした新規治療法の開発は急務であり、種々の組織型腫瘍においてがん幹細胞を同定するとともに、がん細胞の治療抵抗性の制御に基づく効果的な治療法の開発が切望されている。申請者らはこれまでに、致死性の悪性腫瘍を形成するマウス骨肉腫細胞を樹立し、薬剤感受性を示す分化型のAX細胞と薬剤耐性を示すがん幹細胞様のAO細胞の2種類の細胞を同定した。またごく最近、申請者らは、アクチン動態により制御される転写調節因子MKL1が骨肉腫幹細胞の薬剤耐性を制御するマスター因子として働くことを見出している。本年度では、マウス骨肉腫細胞、さらには種々のヒト骨肉腫細胞株に抗がん剤アドリアマイシン(ADR)を処理すると、生存する細胞においてMKL1の核内局在および転写活性が著しく増加することを明らかにした。また、薬剤耐性を示すAO細胞にMKL1を発現抑制すると、ADRによる抗腫瘍効果が劇的に増加することを見出した。逆に、薬剤感受性を示すAX細胞にMKL1を過剰発現すると、ADRによる抗腫瘍効果が有意に減少することも分かった。さらに、ヒト骨肉腫細胞株においてMKL1を阻害すると、ADRの抗腫瘍効果を増強させることが明らかとなった。以上の結果から、MKL1がヒト骨肉腫細胞においても薬剤耐性の制御因子として働く可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において、MKL1が、マウスだけでなくヒト骨肉腫細胞においても薬剤耐性の制御因子として働くことを見出した。また、MKL1阻害がマウス及びヒト骨肉腫細胞において抗がん剤の抗腫瘍効果を増強することを明らかにしており、MKL1が化学療法抵抗性がん細胞に対する新たな分子標的となることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究において、MKL1がin vitroでマウス及びヒト骨肉腫細胞の薬剤耐性制御因子として機能することを見出したので、MKL1がin vivoでの骨肉腫の薬剤耐性に関与するか否か明らかにするとともに、その阻害によって抗がん剤の抗腫瘍効果を増強することができるか検討する。さらに、MKL1阻害によって抗がん剤の抗腫瘍効果を増強することができる化合物のスクリーニングを実施し、がん細胞の治療抵抗性の制御を標的としたリード化合物の取得を目指す。
|