2021 Fiscal Year Research-status Report
がん化抑制に重要なRBの制御を外れたE2F1活性の制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K07136
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大谷 清 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (30201974)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | E2F / pRB / ARF / p53 |
Outline of Annual Research Achievements |
転写因子E2F1は、二大がん抑制因子の1つpRBの機能欠損によって活性化されると、二大がん抑制因子のもう1つp53を活性化するARFがん抑制遺伝子を活性化することにより、がん化抑制に重要な役割を果たしている。E2F1のN末端領域が、がん抑制遺伝子の活性化に貢献していることを見出した為、その役割と相互作用因子による活性の制御メカニズムを解析している。 1) がん抑制遺伝子活性化におけるE2F1のN末端領域の役割 E2F1のN末端領域が基本転写因子GTF2H2と相互作用することを見出した為、E2F1による標的遺伝子の活性化におけるGTF2H2の役割検討した。E2F1と共にGTF2H2を過剰発現すると、E2F1によるがん抑制遺伝子の活性化が増強された。逆に、short hairpin RNA(shRNA)を用いてGTF2H2の発現をノックダウンすると、E2F1によるがん抑制遺伝子の活性化が減弱した。これらの結果から、E2F1のN末端領域は、基本転写因子GTF2H2と相互作用することにより、標的遺伝子の活性化に貢献していると考えられた。 2) E2F1と相互作用する因子によるE2F1活性の増強または抑制メカニズム E2F1の転写活性を増強する因子として、転写のコアクチベーターDDX5, WDR1, 基本転写因子GTF2H2が、抑制する因子としてサイクリンD1, 転写因子NF-kB(RelA), WDR77を同定している。それぞれの因子の過剰発現により、E2F1による標的遺伝子の活性化が増強または抑制されることを確認した。そこで、内在性のそれぞれの因子がE2F1による標的遺伝子の活性化の増強または抑制に関与しているか否かをshRNAを用いたノックダウンにより検討している。DDX5およびGTF2H2のノックダウンにより、E2F1による標的遺伝子の活性化が減弱することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
E2F1のN末端領域の転写活性化における役割が明らかとなり、更にE2F1の新規相互作用因子がE2F1による標的遺伝子の転写活性化に影響を及ぼしていることが明らかになりつつあるため。 1) がん抑制遺伝子活性化におけるE2F1のN末端領域の役割 E2F1のN末端領域に新たな転写活性化領域があることを見出し、Yeast two-hybrid法を用いて相互作用因子を検索したところ、基本転写因子GTF2H2を同定した。そこで、E2F1による標的遺伝子の活性化におけるGTF2H2の役割を検討した。GTF2H2の過剰発現によりE2F1による標的遺伝子の活性化が増強し、逆にノックダウンで減弱した。これらのことから、E2F1のN末端領域が基本転写因子GTF2H2と相互作用することにより、転写活性化に貢献していることが明らかとなった。 2) E2F1と相互作用する因子によるE2F1活性の増強または抑制メカニズム それぞれの因子の過剰発現がE2F1による標的遺伝子の活性化を増強または減弱することが確認された。更に、shRNAを用いたノックダウンにより、少なくとも内在性のDDX5とGTF2H2がE2F1による標的遺伝子の活性化に貢献していることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
予想通りの成果が得られつつある為、当初の予定通りに推進して行く。 1) がん抑制遺伝子活性化におけるE2F1のN末端領域の役割 E2F1とGTF2H2との物理的相互作用を免疫沈降における共免疫沈降で確認する。その為のタグ付きのそれぞれの発現ベクターおよび組換えアデノウイルスベクターは作成済みである。 2) E2F1と相互作用する因子によるE2F1活性の増強または抑制メカニズム DDX5とGTF2H2に関しては、内在性の各因子がE2F1による転写活性化に貢献していることが確認されている。引き続き、内在性のWDR1、サイクリンD1、NF-kB(RelA)、WDR77がE2F1による転写活性化を増強または抑制しているか否か、shRNAを用いたノックダウンにより確認する。更に、こらの因子によるE2F1活性の増強または抑制メカニズムを探る為に、細胞内における相互作用部位をbimolecular fluorescence complementation(BiFC)法により検討する。サイクリンD1に関しては、BiFC用の発現ベクターおよび組換えアデノウイルスベクターを作成済みである。 3) がん細胞における相互作用因子の作用の有無:がん抑制遺伝子を活性化するE2F1活性は、正常な細胞には存在せず、pRBの機能欠損をもつがん細胞に特異的に存在する。このE2F1活性に対し、E2F1の新規相互作用因子がその活性の増強または抑制に作用しているか否かを検討する。その為に、種々のがん細胞株において、shRNAを用いてそれぞれの因子の発現をノックダウンし、E2F1活性が減弱または増強するか否かを、レポーターアッセイおよび内在性の遺伝子発現において検討する。それぞれの因子に対するshRNAの発現ベクターおよび組換えアデノウイルスベクターは作成済みである。
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