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2021 Fiscal Year Research-status Report

がん悪液質におけるカルニチン代謝を制御する分泌因子の分子機構解明

Research Project

Project/Area Number 21K07138
Research InstitutionInstitute of Physical and Chemical Research

Principal Investigator

岡田 守弘  国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (90638991)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2025-03-31
Keywords癌 / ショウジョウバエ
Outline of Annual Research Achievements

生物は様々な変化に対して巧みに代謝応答し恒常性を維持している。一方、腫瘍形成に伴う恒常性維持の破綻は、劣悪な生理状態を誘導し、時として個体は死に至る。中でも、全身に劣悪な生理状態を誘導するがん悪液質は、進行がん患者の80%に認められ、その存在は古代ギリシャの医学書にも記述があるが、その分子機構は明らかではなく、治療法はない。

がん悪液質本態の分子機構の解明のために、本研究では個体レベルでのがん悪液質研究に適したショウジョウバエがんモデルを用いている。これまでに、腫瘍組織から遠隔組織である脂肪体 (ヒトの脂肪・肝臓に相当する器官)におけるカルニチン代謝ががん個体の生存率に関与している事を明らかにしている。しかし、なぜ、局所的に腫瘍を誘導することで、遠隔組織である脂肪体のカルニチン代謝のリモデリングが生じるか、そのメカニズムは不明である。

本研究では、腫瘍から分泌される因子に着目し、脂肪体におけるカルニチン代謝が制御される新たな分子機構を解明し、個体レベルでのがん悪液質本態の分子機構の全容の解明を試みた。2021年度は、本研究の主要な柱である、脂肪体に作用する分泌因子の同定において明確な進展が得られた。具体的には、腫瘍組織内の分泌因子のみをGFPで可視化出来るトランスジェニックがん個体を作成し、分泌因子がどの組織へ多く取り込まれているのかその遠隔組織を同定した。そして、脂肪体において多く取り込まれる新規分泌因子を同定し、この分泌因子によりがん個体の脂肪体におけるカルニチン代謝リモデリングが制御されている可能性が示された。この研究結果により、癌が全身の生理状態に与えるシステミックな悪影響の実態を解析する際の、強固な基盤が確立出来た。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は、腫瘍から分泌される因子に着目し、脂肪体におけるカルニチン代謝が制御される新たな分子機構を解明し、個体レベルでのがん悪液質本態の分子機構の全容の理解を目指すものである。

これまでに、正常個体群とがん個体群の上皮組織を用いたRNA-seq解析を行い、腫瘍組織で発現が上昇する分泌因子候補を複数同定した。そこで、腫瘍から分泌される何らかの因子により、腫瘍から遠隔組織である脂肪体のカルニチン代謝が制御される可能性を検証した。これまでに、網羅的なRNAiスクリーニングによってこれらの候補因子を腫瘍組織において阻害し、腫瘍組織自体には影響を与えないが、がん個体の生存率が顕著に上昇する分泌候補を複数同定した。 さらに、腫瘍組織内の分泌因子のみをGFPで可視化出来るトランスジェニックがん個体を作成し、分泌因子がどの組織へ多く取り込まれているのかその遠隔組織を同定した。そして、脂肪体において多く取り込まれる腫瘍由来の分泌因子を新規に同定することが出来た。

以上の経過から、本研究は順調に進展しているといえる。

Strategy for Future Research Activity

本年度の研究で同定された新規分泌因子によって、がん個体の脂肪体におけるカルニチン代謝リモデリングが制御されている可能性を検証する。そのための、最も重要な課題は、脂肪体における分泌因子の受容体の同定である。

具体的には、遺伝学を用いて、候補となる受容体の発現を脂肪体特異的に阻害することで、がん個体の生存率およびカルニチン量の変化を検証する。その後、変異体や過剰発現系統を用いて個体レベルでの詳細な解析を行う予定である。

Causes of Carryover

当初購入を予定していた、物品の購入費が少なく済んだため。また国内、国際学会旅費が不要であった。翌年度にさらに必要となる解析費用として使用する予定である。

  • Research Products

    (5 results)

All 2021

All Presentation (5 results)

  • [Presentation] Tumor-deprived Netrin affects organismal metabolism through carnitine in Drosophila2021

    • Author(s)
      岡田守弘、高野智美、池川優子、Iswar HARIHARAN、Sakan Yoo
    • Organizer
      14回日本ショウジョウバエ研究集会
  • [Presentation] 個体死を制御する分泌因子の分子機構の解明2021

    • Author(s)
      岡田守弘、高野智美、Sakan Yoo
    • Organizer
      第92回日本動物学会
  • [Presentation] A role of metabolic reprogramming of non-cancer tissues in cancer-induced organismal death2021

    • Author(s)
      岡田守弘、Sakan Yoo
    • Organizer
      The 3rd Kobe University - RIKEN BDR Joint Symposium
  • [Presentation] A role of metabolic reprogramming of non-cancer tissues in cancer-induced organismal death2021

    • Author(s)
      岡田守弘、高野智美、Sakan Yoo
    • Organizer
      第23回 異分野交流の夕べ
  • [Presentation] Tumor-derived Netrin affects organismal metabolism through carnitine in Drosophila2021

    • Author(s)
      岡田守弘、高野智美、池川優子、Iswar HARIHARAN、Sakan Yoo
    • Organizer
      RIKEN BDR Retreat 2021

URL: 

Published: 2022-12-28  

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