2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K07140
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
小島 康 愛知県がんセンター(研究所), がん病態生理学分野, 主任研究員 (30464217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三城 恵美 (佐藤恵美) 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任講師 (00455544)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 悪液質 / 大腸がん |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの進行がん患者は、骨格筋萎縮を主徴とする「がん悪液質」に苦しむことが多い。しかし、その病態生理は不明な点が多く、根本的な治療方法は開発されていない。申請者らは、がん悪液質モデルマウスを解析したところ、骨格筋より、むしろ肝臓で激しい代謝変化が生じることを見出した。さらに悪液質肝臓では代謝産物であるNAD(nicotinamide adenine dinucleotide)濃度が半減すること、そしてNAD消費酵素であるNNMTおよびCD38の発現が上昇することを観察した。NADは、酸化還元反応の補酵素として、またSirtuinやPARPなど重要な生理機能に関わる酵素の基質として働く代謝物である。近年、NADの細胞内濃度減少は、ヒトの骨格筋萎縮や神経変性と強く相関することを示唆する報告が相次いでいる。NNMT (nicotinamide N-methyltransferase)は、NAD合成の原材料であるNAM(nicotinamide)をMNA(1-methyl-nicotinamide)に変換する。MNAは尿中に排出されるので、NNMT活性上昇は、NAM濃度低下、NAD合成抑制につながると想定されている。CD38は、NADを分解する酵素である。CD38 ノックアウトマウスでは、生体のNAD濃度が劇的に上昇することが報告されている(肝臓では10倍近く上昇)。この表現型は、CD38が、生体でNAD濃度をコントロールしている主要酵素であることを強く示唆している。NNMTおよびCD38は、NADサルベージ回路から、それぞれNAMおよびNADを取り除き、生体の総NAD量を減少する方向に作用する。本研究では、NNMT阻害剤およびCD38阻害剤を悪液質モデルマウスに投与して検証して、悪液質におけるNAD代謝に与える影響、および悪液質治療薬としての可能性を探ることを目的とする
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行して取り組んでいたApc/Smad4/Nnmt-/-の繁殖効率が著しく不良で、Apc/Smad4/Nnmt-/-による解析は困難であると判断して中止した。C57BL/6由来のLLCおよびB16細胞株移植を用いた悪液質モデルは、先行論文が多数ある。その作出を試みたが、申請者の研究室ではうまく悪液質を発症させることができなかった。そのため研究室内で樹立されていたC57BL/6由来の大腸がん細胞株を移植、培養尾のサイクルを複数回実施したところ、悪液質症状の発症するサブクローンを得た。またCD38/CD157ノックアウトマウスも入手して繁殖を開始した。さらに大腸がん細胞株のバックアップとして、悪液質発症が可能であるC57BL/6由来のマウス膵がん細胞株も入手した。
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Strategy for Future Research Activity |
手元にあるマウス大腸がん細胞株、マウス膵臓がん細胞株を用いた悪液質モデルの条件検討を慎重に実施して、NnmtおよびCD38/CD157ノックアウトマウスへの移植実験に移行する。またNnmtおよびCD38阻害剤の薬理実験のセットアップにも着手する。
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Causes of Carryover |
Apc/Smad4/NNMT複合変異マウスの作出が不調であったこと、およびコロナ渦の影響で研究遂行が一時的に抑制せざる得なかったため
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Research Products
(2 results)