2021 Fiscal Year Research-status Report
Identification of genomic elements that promote hormone-responsive transient expression of oncogenes
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21K07148
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 真太郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (20837869)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 性ホルモン / DNAトポイソメラーゼ / DNA二重鎖切断 / DNA修復 / 乳癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンドロゲンやエストロゲンなどの性ホルモン受容体は、ホルモンに結合すると転写因子として様々な遺伝子の転写を制御する。性ホルモン刺激後の転写応答時に、標的遺伝子の転写制御配列(プロモーターとエンハンサー)でゲノム切断がDNA topoisomerase II(TOP2)依存的にしばしば発生する。所属する研究室において、非相同末端結合が、この切断を再結合することが見つかった。細胞がこのゲノム切断を効率よく再結合できないと、性ホルモン刺激後の転写応答が大きく変わることも分かった。本研究の目的は、ゲノム切断の修復と早期転写応答とのクロストークの分子メカニズムを明らかにすることである。得られた成果は、ATM、BRCA1、BRCA2などのDNA損傷修復遺伝子の変異の保因者が、乳癌や卵巣癌、前立腺癌を発症しやすいか、その問いに答える分子機構を解明する基盤となる。 今年度は、性ホルモン刺激後の転写応答時に生じるゲノム切断の修復に必要な因子を探索した。TOP2酵素は、ゲノムDNAの切断と再結合を高速度に繰り返す。TOP2は、この触媒反応にしばしば失敗し、TOP2がDNAの5’末端に共有結合した難治性のゲノム切断が生じることが所属研究室で明らかになっている。遺伝子破壊やノックダウンを行い、この難治性のゲノム切断が蓄積するATMやTDP2などの変異体が新たに得られた。研究実施計画にしたがい、次年度はゲノム切断修復酵素が欠損した時の、外的刺激への転写応答変化を全ゲノムで解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRISPR/Cas9を用いた遺伝子破壊や、shRNAを用いたノックダウンにより、TOP2阻害抗癌剤(エトポシド)に感受性となる遺伝子を探索した。エトポシドはTOP2-DNA複合体を大量生産する。エトポシド処理後のTOP2-DNAを定量し、野生型より増加していれば、候補遺伝子がTOP2依存的なゲノム切断の修復に関与すると結論できる。 切断端5’末に結合したTOP2を除去する反応の機序は、相同組換えの最初のステップ(切断端から5’末 1本鎖DNAを削除)と似ている。所属研究室において、MRE11とBRCA1が相同組換えだけでなく、TOP2の除去にも関与することが分かった(Mol Cell, 2016; PNAS USA, 2018; iScience 2020)。相同組換えの最初のステップ(5’末 1本鎖DNAを削除)に関与するタンパク質が同時にTOP2除去にも関与すると着想した。 ヒト乳がん細胞MCF-7を用い、DNA損傷修復遺伝子の遺伝子欠損や遺伝子ノックダウンを行った。そして、エトポシド処理後のTOP2-DNAを定量した。これまでにヒトB細胞において、ATMが欠損すると、野生型に比べてエトポシド処理後にTOP2-DNAが増加することが予備的実験結果として得られていた。ただし、TK6細胞ではG1期に細胞を停止することが実験手技上、困難であった。そのため、相同組換えが抑制されるG1期においてもATMがTOP2の除去に関与するか否かは不明であった。そこで今回、ATMを欠損させたMCF-7細胞を血清飢餓条件でG1期に停止させた。その結果、ATMが欠損すると、野生型に比べてエトポシド処理後にTOP2-DNAが増加することが分かった。TK6細胞やMCF-7細胞において、ATMがTOP2の除去に重要であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、多重遺伝子破壊→エトポシド感受性解析により、これまでに解明した各因子がどのDNA修復経路において機能するか、その全貌を解析している。今後は、前立腺癌細胞(LNCaP、男性ホルモン受容体陽性)をアンドロゲン曝露後、早期転写応答を解析する予定である。具体的には、TDP2、ATMなどの相同組換え因子、非相同末端結合を機能阻害したLNCaP株(shRNAは作成済)をアンドロゲンに曝露し、NET-CAGE法で解析する。発癌遺伝子の早期転写応答が異常に増加すれば、ATMやBRCA1、BRCA2の変異の保因者が前立腺癌を起こしやすい原因が、アンドロゲンへの早期転写応答の異常が原因とする仮説を支持する。 NET-CAGE法は、プロモーターやエンハンサーの活性を高感度で測定する手法である(Nature Genet 2019, PMID:31477927)。エンハンサーは、数百塩基の長さであり、各遺伝子に複数個存在する。活性化されたエンハンサーはプロモーターに近接してプロモーターからの転写を活性化する。活性化されたエンハンサーはエンハンサーRNA(eRNA)が発現する。NET-CAGE法は、合成中のRNA(native elongating transcript)のみdeep sequencingし、CAGE法によりRNAの5’端の位置を同定する手法であり、プロモーターの活性とエンハンサーの活性を同時に解析できる。NET-CAGE法を用いることで、ゲノム切断修復酵素が欠損した時の、アンドロゲン曝露後の早期転写応答の変化を全ゲノムで解明する予定である。
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Research Products
(3 results)