2022 Fiscal Year Research-status Report
Development and characterization of cancer-specific monoclonal antibodies against tumor-associated glycoproteins.
Project/Area Number |
21K07168
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金子 美華 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (00323163)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CasMab / 抗体創薬 / 抗体医薬 / 腫瘍特異的 |
Outline of Annual Research Achievements |
Cancer-specific monoclonal antibody (CasMab) 法は、がん特異的な反応性を示す抗体を樹立する方法として我々が独自に開発した技術である。我々はこれまで、このCasMab法を用い、細胞表面に発現するI型膜タンパク質の腫瘍特異性を特徴づける表現型を識別する抗体を戦略的に樹立してきた。 本研究課題では、がん細胞、正常細胞の両方に発現しているタンパク質を標的とし、既に抗体医薬が開発されているがより優れた抗体が求められるもの、または、抗体医薬が存在しない新規のものを標的分子として、がん特異的抗体の樹立を目指している。そして、樹立したがん特異的抗体を利用し、腫瘍特異性を担う原因の実態を解明し、腫瘍型標的分子のがん細胞形質への関与を解析する計画である。また、がん特異的抗体の抗体医薬開発の可能性を、遺伝子改変技術を用いて検証する計画である。 研究計画に基づいて、令和4年度は、継続して標的分子4種類に対する抗体ライブラリーの作製を実施した。各標的分子に対して、100クローン以上を超えて、ハイブリドーマの樹立を行なっている。樹立した抗体について、順次、種々のアプリケーションへの有用性を検証した。標的分子の標準となる候補抗体1点以上について、また、いずれかのアプリケーションでCasMab傾向を示した候補抗体については、エピトープ探索実験を遂行した。解析に進んだ候補抗体については、抗体遺伝子を取得し、必要に応じて遺伝子組み換え等により抗体活性の検証を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき、引き続き、標的分子に対してCasMab法を用いてがん特異的抗体を樹立しつつ、順次、FACS, WB, ELISA, 免疫染色など、種々のアプリケーションへ反応性を確認した。より多くのアプリケーションに使用可能な抗体を標準候補抗体として特定した。また、いずれかのアプリケーションで腫瘍特異性を示した抗体をCasMab候補抗体と設定して、それぞれの候補抗体のエピトープ検索実験を遂行した。また、候補抗体の抗体遺伝子取得実験も遂行した。 エピトープ検索実験は、そもそも、CasMab候補抗体の認識部位に関連すると想定される、腫瘍特異性を特徴づける表現型を解明することを目的として、候補抗体の抗原認識部位を特定する実験である。標的分子のN末端側、もしくはC末端側からドメイン毎、または任意の数のアミノ酸毎に削り込んだdeletion型分子を細胞株に強制発現し、候補抗体の反応性から、標的分子のどの部位にエピトープが存在するのかを推定した。さらに、我々が開発した、5xHis tag や複数のAla残基をエピトープ周辺に挿入または置換することによってepitopeを破壊する手法を実施することで、抗原認識部位をより詳細に絞り込む実験を実施した。 抗体遺伝子取得実験では、ハイブリドーマより、サブクラス特異的に抗体遺伝子を取得し、リコンビナント抗体発現実験により、活性を担う抗体遺伝子がきちんと取得できていることを確認した。ハイブリドーマの状態によっては、活性を担う抗体遺伝子がスムーズに特定できない案件が複数発生しており、引き続き対策を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、引き続きCasMab法によって得られた抗体の性状解析を実施する予定である。具体的な研究内容は以下の通り。 (1)エピトープ探索実験の実施。腫瘍特異性を特徴づける表現型を解明するため、抗体の認識部位を特定する。N末端側またはC末端側からドメインごとに削り込んだdeletion分子を細胞株に強制発現し、候補抗体の反応性から標的分子のどの部位にエピトープが存在するかを推定する。アミノ酸置換実験(アラニンスキャン)、または、申請者らの開発した5xHis tag 挿入また置換によるepitope破壊法を実施することで、エピトープ部位の特定が可能となる。 (2)これまでのエピトープ解析の結果の蓄積から、腫瘍特異性を特徴づける表現型には、必ずしも腫瘍型糖鎖構造が存在しているわけではないことが示唆されている。そこで、糖鎖修飾以外の翻訳後修飾も想定し、その作用機序を解明を目指す。 (3)種々の抗体活性の検証。抗体遺伝子を取得し、遺伝子組換えによりヒト定常領域とのキメラ型抗体を作製する。作製したキメラ型抗体の抗体依存性細胞障害活性(antibody-dependent cellular cytotoxicity: ADCC)や補体依存性細胞障害活性(complement dependent cytotoxicity: CDC)を調べる。
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