2021 Fiscal Year Research-status Report
新規抗がん剤開発を目指したcSBLの抗腫瘍効果解析
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21K07198
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
立田 岳生 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (70438563)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リボヌクレアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,新規抗がん剤候補である cSBL の可能性をさらに追求するため,その作用機序を明らかにすること、および cSBL の効果を最大限に利用する他の薬剤との併用などの検討を目的としている。 今回、これまでに報告のなかった膀胱がんに対する cSBL の効果を解析したところ、1 種の正常組織由来細胞(HCV29)および 6 種の膀胱がん細胞(KK47,YTS1,YTS3,RT4,T24 および MGH-U1)を用いて、cSBL および 2 種類の既存薬剤(Cisplatin および Gemcitabine)の膀胱がんに対する抗腫瘍効果の検討を行った。WST 法によって各細胞の生存率を測定し、IC50値およびがん細胞選択性の指標となる Relative sensitivity (RS) 値を算出した結果、cSBL は種々の膀胱がん細胞に対し RS > 1 を示し、すなわち高いがん細胞選択性を示した。一方、Cisplatin および Gemcitabine に関しては RS < 1の値を示す細胞が多かったことからがん細胞に対する選択性が低いことが示唆された。また浸潤性の細胞株 3 種(YTS-1,T24 および MGH-U1)を用いて,細胞死の解析を行なったところ,いずれのがん細胞に対しても,cSBL がカスペースの活性化を介したアポトーシスを誘導することが明らかとなった。今回の実験結果から cSBL は膀胱がんに対しても、がん細胞選択的なアポトーシスを誘導するため、今後膀胱がんに対する新規薬剤として応用できる可能性があると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、Rana catesbeiana 由来のリボヌクレアーゼである cSBL の、抗がん剤としての有効性の検討、既存の薬剤との比較ならびに cSBL の抗腫瘍作用機序の解明を試みることを目的にしている。今年度は、RNA 分解とアポトーシス誘導メカニズムの解明のため、(1)cSBL 処理による細胞内 RNA の分解過程の詳細の観察をし、他のシグナル伝達との関係などを調べること、また(2)cSBL の膀胱がんに対する効果を検討すること、が計画されていた。 (1)の RNA 分解過程の観察は、コロナ禍の影響による機器使用の困難があり進捗が遅れているものの、cSBL 処理により伝達される新規のシグナルが明らかになるなど進捗があった。また、(2)に関しても cSBL の有効性が認められ、他の薬剤と比較してもがん細胞選択性などの点で有効な知見が得られた。 さらに、次年度に予定していた EGFR 発現に対する cSBL の効果についても実験に着手し、一定の成果が得られている。 以上のことからおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、研究を進行する。 主に2021年度に明らかになったcSBL処理によって伝達されるシグナルとRNA分解作用の解明や、EGFRファミリーに対するcSBLの発現減少効果の解析などを行う予定である。
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Causes of Carryover |
膀胱がんに対する cSBL の効果の解析が順調に進み、条件検討等に必要な試薬などが節約できた点が挙げられる。翌年度分として請求した助成金と合わせ、タンパク質解析に使用する抗体など物品費を中心として使用していく予定である。また学会発表や論文投稿費にも使用する予定である。
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