2022 Fiscal Year Research-status Report
新規抗がん剤開発を目指したcSBLの抗腫瘍効果解析
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21K07198
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
立田 岳生 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (70438563)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リボヌクレアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新規抗がん剤候補であるcSBLの可能性をさらに追求するため、その作用機序を明らかにすること、および cSBL の効果を最大限に利用する他の薬剤との併用などの検討を目的としている。 これまでに、悪性中皮腫H28細胞をcSBLで持続処理することで、cSBL耐性(cSR)細胞を樹立し、得られたクローン株を用いたマイクロアレイ解析の結果から、ATP binding cassette transporter C2 (ABCC2)の発現がcSR細胞で低下していることを見出した。今回、ABCC2の発現をタンパク質レベルで確認し、H28 細胞に比べてcSR細胞細胞におけるそれぞれの発現が低下すること、また、H28 細胞にcSBLを72時間処理した際も濃度依存的なABCC2の発現低下傾向が観察されることを明らかにした。 昨今、DNA 障害型の低分子抗がん剤などにより、薬剤耐性に寄与するABCトランスポーターの過剰発現が引き起こされうることが現行のがん治療で問題となっている。今回、H28細胞においてもシスプラチンおよびペメトレキセド処理によりABCC2の発現が上昇するか否か、またそれら薬剤処理時にcSBLを共存させた場合のABCC2の発現について検討した。その結果、ABCC2の発現は、それぞれの抗がん剤により増加傾向が見られた一方、cSBL単独または各薬剤と共処理した際には、ABCC2 の発現はコントロールに対しておよそ0.4倍ー0.5倍に低下した。これらのことからcSBLは抗がん剤処理時においてもABCC2の発現を著しく低下させることが明らかとなった。したがってcSBLを薬剤耐性がんに対して用いたり、ABCトランスポーターの過剰発現を誘導する薬剤と併用する薬剤療法が、現行の治療法の問題点を克服する新たながん治療戦略となる可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記報告の通り、cSBLがABCトランスポーターの発現を低下させることを見出し、それが新規がん治療戦略になりうる可能性を得た。また、実験計画にあった、cSBLがEGFRの発現低下を伴う細胞死を誘導する研究でも、その作用機序の解析で一定の結果を得ている。さらにcSBLが誘導するストレスキナーゼの活性化に関する研究でも、新規の知見を得ている。これらの成果の一部は既に論文発表も行っているため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度において、当初の研究計画に従いおおむね順調に進展したことから、令和5年度においても当初の研究計画に基づき推進していく予定である。 特にABCC2の発現低下に関しては、他のABCトランスポーターの発現に対するcSBLの影響も踏まえ、その効果の詳細を明らかにする。また、これまでに明らかにしているcSBL処理によって伝達されるシグナルの詳細な解析などを行う。
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Causes of Carryover |
研究が概ね順調に進んでおり、物品費が節約できた。またコロナ禍により学会の参加を自粛していたため学会旅費に要する費用が低下している。
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