2022 Fiscal Year Research-status Report
免疫チェックポイント阻害剤応答性細胞集団に発現する新規機能分子の解析
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21K07199
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
大多 茂樹 国際医療福祉大学, 医学部, 准教授 (20365406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三沢 彩 国際医療福祉大学, 基礎医学研究センター, 講師 (20598453)
岩田 卓 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30296652)
河上 裕 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (50161287)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント阻害剤 / 腫瘍浸潤T細胞 / CAR-T / CD8陽性T細胞 / Tステムメモリー細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性黒色腫瘍および肺がん抗PD-1抗体投与患者の末梢血単核球を用いて、シングルセルRNAシークエンス解析を実施した。現在、肺がん検体でCITE-seq解析を行っている。治療前、抗PD-1抗体奏効患者CD8+T細胞分画に存在するTSCM(T memory stem cells)様遺伝子発現クラスターに発現する複数の遺伝子に着目して解析を開始した。そのうちTSCMのマーカーの一つとして知られるTCF7との発現相関が高いNELL2に着目し、ヒトおよびマウスCD8+T細胞での機能解析を行っている。当該機能解析のために、ゲノム編集技術を用いて独自にNELL2ノックアウト(KO)マウス作出した。NELL2 KOマウスCD8+T細胞の遺伝子発現解析をssGSEA解析を駆使して行った。さらに、NELL2 KOマウスおよびOT-1マウス(OVA-TCR発現Tgマウス)を交配させ得たOT-1/NELL2 KOマウスのT細胞を用いて細胞障害性試験をin vitroで行うとともに、担癌モデルマウスでの養子免疫療法の実施を計画している。ヒト健常人を用いたがん抗原特異的細胞障害モデルなどを利用したCD8+T細胞におけるNELL2の機能実験にも取り組んでいる。これらに加えて、マウスおよびヒトCAR-T細胞におけるNELL2発現制御による機能改善を目指している。同様に、腫瘍浸潤T(TIL)細胞の機能向上にNELL2を利用することを想定し(遺伝子改変TIL)、子宮頸がんにおいてTIL細胞の収集を行っている。公開in silico データにより、がん抗原特異的ヒトT細胞におけるNELL2の発現も明らかとなっている。さらに、抗PD-1抗体奏効予測因子としてのNELL2の意義についても着目している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
免疫チェックポイント阻害剤治療を受けた肺がん患者末梢血単核球を用いて、バルクRNAシークエンス・シングルセルRNAシークエンスを実施した。さらに、CITE-seq解析も実施し、種々のパイプラインを使用したデータの解析を行っている。NELL2 KOマウスCD8+T細胞の遺伝子発現解析により、KO マウスにおいてTcf7,Slamf6, Lef1といったTSCM(T memory stem cells)マーカーの発現低下が認められた。これらのことから、NELL2が単なるマーカーとしての意義を超えて、機能的にTSCMの維持に貢献している可能性が想定された。興味深いことに、代謝関連遺伝子(グルコース、脂質)の発現変化も認められたために、NELL2によるCD8+T細胞の代謝制御にも着目している。ヒト健常人を用いたがん抗原特異的細胞障害モデルにおいて、遺伝子工学的にNELL2を過剰・抑制発現させた場合のがん細胞殺傷能に与える効果を検証した。さらに、NELL2 KOマウスとOT-1マウスを交配させ、マウスT細胞のOVA発現B16がん細胞に対する殺傷能をin vitroで評価するとともに、OT-1細胞にNELL2を過剰発現させて、その細胞殺傷能に対する影響を評価している。これらに加えて、NELL2 KOマウスに、マウスがん細胞を移植し、腫瘍形成能の評価も開始した。TIL療法の臨床研究を行っているが、マウス・ヒトCAR-Tシステムを新たに導入し、TILおよびCAR-TにおいてNELL2の遺伝子改変を行い、それらの機能向上を試みる研究を開始した。OT-1およびNELL2 KOマウスコロニーの拡大に時間を要しているために、想定よりも進捗に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)In vitroにおけるNELL2の機能解析。ヒト健常人を用いたがん抗原特異的細胞障害モデルにおいて、T細胞にNELL2を過剰もしくは抑制発現させて、その細胞障害能を評価する。マウスでは、OT-1/NELL2 KOマウスの脾臓・リンパ節よりCD8+T細胞を回収したのち、B16-OVAに対する細胞殺傷能を検証しているが、これらに加えてOT-1細胞にNELL2を過剰発現させた系を用いて、同様に細胞障害性や遺伝子発現変化を解析する。これらに加えて、マウスおよびヒトGPC-1 CAR-T細胞を用いて、NELL2の遺伝子改変を行い、その細胞障害性能に与える効果や、疲弊度・増殖能・代謝能・フェノタイプなどの変化を評価する。これらの成果を踏まえて、ヒト子宮頸がんTILの遺伝子改変も目指す。2)In vivoにおけるNELL2の機能解析。OT-1/NELL2 KOおよびOT-1マウスの脾臓・リンパ節よりT細胞を回収したのち、B16-OVA担がんモデルマウスに対して養子免疫療法を行うことにより、その腫瘍縮退能を検証する。同時に、OT-1マウスT細胞にNELL2を過剰発現させ、同様な養子免疫療法を行う。NELL2 KOマウスにがん細胞を移植し、腫瘍形成能の評価を継続して行う。新たに導入したGPC1 CAR-Tのシステムを利用して、マウスにおけるNELL2遺伝子改変CAR-Tの抗腫瘍効果の検証を担癌マウスモデルで行う。3)In silico解析における解析。In houseデータ(scRNA-seq, Bulk RNA-seq)及び公開データベースを用いて、NELL2のT細胞における発現評価を行うとともに、機能予測を行う。これらの研究により、T細胞におけるNELL2の普遍的機能解析を行うとともに、最終的には、TILやCAR-T細胞でNELL2を遺伝子改変することによる機能的向上を目指す。
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Causes of Carryover |
マウスの交配の進捗が予定より遅れたこと。コロナ禍により試薬・資材の遅配が生じたことが主な理由である。マウスを用いた、抗腫瘍研究を中心に研究費を円滑に使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Inhibition of stearoyl-CoA desaturase 1 (SCD1) enhances the antitumor T cell response through regulating β-catenin signaling in cancer cells and ER stress in T cells and synergizes with anti-PD-1 antibody2022
Author(s)
Yuki Katoh, Tomonori Yaguchi, Akiko Kubo, Takashi Iwata, Kenji Morii, Daiki Kato, Shigeki Ohta, Ryosuke Satomi, Yasuhiro Yamamoto, Yoshitaka Oyamada, Kota Ouchi, Shin Takahashi, Chikashi Ishioka, Ryo Matoba, Makoto Suematsu, Yutaka Kawakami
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Journal Title
J Immunotherapy Cancer
Volume: 10(7)
Pages: e004616
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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