2021 Fiscal Year Research-status Report
多発性骨髄腫患者にて分子標的薬ダラツムマブによる輸血検査偽陽性の新規回避法の確立
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21K07201
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
川村 宏樹 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (20333495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 雅彦 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80377192)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / ダラツムマブ / CD38 / 輸血検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】再発・難治性の多発性骨髄腫の治療薬として臨床許可されダラツムマブ(DARA)は、腫瘍化で細胞上に発現するCD38をターゲットとする分子標的薬である。CD38は赤血球にも発現していため、DARA投与患者の輸血検査に干渉して偽陽性となり結果判定に影響を与え問題となっている。本研究は赤血球試薬に影響を与えず、DARA投与患者の輸血検査において簡易法で保存可能な腫瘍細胞由来の吸収試薬の開発に結び付く基礎技術の確立を目的とする。令和3年度(1年目)は骨髄腫細胞株を用いて、PBSにDARAを加えた模擬検体、ヒト血漿にDARAを加えた模擬検体の順に検討してDARAの吸収条件検討と吸収効率を検討した。 【成果】はじめに、実験的にDARAが輸血検査のスクリーニング血球に擬陽性をもたらす条件を検討した。購入したDARAをPBSで報告のある患者血中濃度1,000~1μg/mLまで濃度を振って溶液を作成して、間接抗グロブリン試験(IAT)をおこなった、その結果、通常の不規則抗体陽性の時と異なって試験管の底部に張り付き、崩れていく様相を示した。凝集強度は1+~W+であった。ただし、複数のロットのスクリーニング血球で検討をおこなったところ、濃度と凝集強度の関係にはロット差が認められた。次にPBSをFFP(不規則抗体陰性)で希釈して検討したところ、PBSより試験管底部に張り付くのは弱くかつ凝集強度も弱かった。次にFFPで希釈したDARA(1mg/mL)をCD38陽性骨髄腫細胞株のβ-M細胞を用いて、加温時間、細胞数を変動させて吸着後に遠心して上清を回収してIATをおこなった。しかしながら、毎回安定した結果は得られていない。これはβ細胞の発現量の細胞差の可能性が考えられ再クローン化をおこなうと同時に、他のCD38陽性骨髄腫細胞株でも検討をおこなう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画がやや遅れている原因は2つある。1つ目はCD38陽性骨髄腫細胞株に模擬検体中のDARAの吸着条件が確定できていないことである。「5.研究実績の概要」に記入したように吸着できることは確認できたが、DARA全量を腫瘍細胞株に吸着でき安定性にているとは言えず、更なる検討が不可欠である。これが本研究の最重要項目なので、細胞を再クローニングしたり、違う細胞株に変更したり、検討を重ね吸着条件を確定したい。2つ目は模擬検体中のDARA濃度の測定と腫瘍細胞株のDARA結合状態の測定で、CD38ペプチドで固相化したプレートを用いて模擬検体中の吸収前後のDARA濃度をELISA法で測定する予定であった。この方法はDARAの発売元より既に論文で報告されている条件を教えてもらえるように依頼したが、特許があるので断られた。その為、模擬検体中のIgG量を吸着前後で測定して吸着率を検討するように変更して対応する。尚このIgG量の測定は、DARAを使用した患者血漿中の抗CD38抗体の検討で間接的な測定であるが定石の方法となっている。以上のことより、本研究はやや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の進行状況や結果を踏まえて今年度は、1.ヒト血漿中のDARAの吸収方法の基本条件検討、2.模擬検体中のDARA濃度の測定と腫瘍細胞株のDARA結合状態の検討、3.骨髄腫細胞株にDARA以外の不規則抗体が吸収するか否かの検討の3つを中心に研究に取り組む。 1.ヒト血漿中のDARAの吸収方法の基本条件検討: これは本研究の最重要項目なので、細胞を再クローニングしたり、違う細胞株に変更したり、多方から検討を重ね吸着条件の確定を試みる。 2.模擬検体中のDARA濃度の測定と腫瘍細胞株のDARA結合状態の検討: DARA濃度の測定は模擬検体中のIgG量を吸着前後で測定して吸着率をする。またDARA結合状態の検討はフローサイトメトリー以外で輸血検査試薬の抗ヒトIgGで凝集するかなど、簡易的手法を検討する。 3.骨髄腫細胞株にDARA以外の不規則抗体が吸収するか否かの検討: ヒト血漿に既知の不規則抗体を加えた模擬検体を作製して、PEG-IAT法(試験管法)とカラム凝集法で添加した不規則抗体が検出できるか検討する。添加する不規則抗体は抗E、抗Dia、抗Jka、抗Jkb、抗Fya、抗Fybなどの保存血漿や市販されているポリクローナル抗体を利用する。
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Causes of Carryover |
本報告書の「7.現在までの進捗状況」に記入した通り、D38陽性骨髄腫細胞株に模擬検体中のDARAの吸着条件が確定できていないことである。それに伴い、IATのカラム凝集法に関連する試薬代などの経費が減少した。またELISA法による測定も実施できていないので、関連試薬の購入をおこなわなかった。今年度は「8.今後の研究の推進方策」に記載した通りに新たな代替法を実施するので、その為の試薬購入に使用する予定である。
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