2021 Fiscal Year Research-status Report
Mycが誘導する複製・転写ストレスの増強による治療ーG4リガンドを中心に
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21K07212
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
関本 隆志 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (20436322)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発がん性複製ストレス / c-Myc / グアニン四重鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
発がんシグナルが誘導するDNA複製の遅延・停止(発がん性複製ストレス、以後「発がんRS」と示す)は細胞老化・細胞死を誘導し、これを解消するRS応答機構が発がん促進に重要な役割を果たす。この発がんRS応答機構を解明し、RS増強による細胞死を誘導する治療法が期待されている。 グアニンに富む1本鎖DNAはグアニン四重鎖 (G-quadruplex, G4) 構造と呼ばれる高次構造を形成する。最近の研究からG4構造は複製フォーク進行を阻害しRSの原因となる可能性が示唆されているが、発がんRSにおける役割は明らかではない。そこで、本研究では発がんRSにおけるG4の役割を解明することを目的として研究を展開した。 薬剤添加によりがん遺伝子c-Myc(Myc)を活性化できるモデル細胞系を用いて、G4を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いて核内DNAのG4構造を染色したところ、Myc活性化はS期におけるG4シグナルを増加させ、G4安定化剤処理はこのG4シグナルを増強した。加えて、G4安定化剤処理はMycが誘導するDNA二重鎖切断、細胞死を増強した。これらのことから、Myc誘導性RSにG4が関与することが示唆される。興味深いことに、MycによるG4増加は転写阻害剤処理によっても抑制された。このことから、Mycによる転写と複製の活性化により両装置の衝突がG4形成、二重鎖切断を引き起こしたことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前所属分野主任の定年退職により令和3年度4月から生体調節研究所内の現所属研究室へ移動となった。現所属分野は昨年度まで研究所内で実験室を間借りしており、本年度4月に空いた部屋に実験室を新設する事となった。そのため、実験室のデザインから工事依頼、立ち会いなどの業務に時間を取られ実験作業そのものが半年近く出来なかった事に加え、実験室が完成した後も使い始めて分かる種々の問題に対処するため時間が取られてしまっていた。 年度後半から実験できる様になったので、少しでも遅れを取り戻せる様に今後は研究を推進していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1) がん遺伝子Myc活性化に依存してG4シグナルが増加し、Myc高発現細胞においてG4安定化剤処理がDNA二重鎖切断や細胞死を増加させる事を見いだした。論文化に向け、再現性の確認や種々の反応条件など、より詳細な解析を進める。 (2) 上記Myc活性化によるG4構造増加の分子機構の詳細な解析を進める。具体的には、Mycにより活性化する転写やDNA複製のどちらに依存するか、転写・複製阻害剤の影響や転写や複製を制御する分子の抑制・活性化、それぞれの活性化を促進する他の発がんシグナルの使用などを通して解析を進めていく。 (3) 我々はこれまで、複製忠実度の低い特殊なY-family Polymerase(Y-Pol)がMycによる複製ストレスの軽減に関与することを報告してきた。しかし、どの様な機構で複製ストレスを軽減するかは明らかでない。Y-Polによる複製ストレス軽減とG4の関わりについて検討する。
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Causes of Carryover |
現在、Myc活性化は薬剤処理を用いておこなっているが、薬剤の非特異的な効果などの影響が無いとは言えない。そこで、Mycタンパク質発現誘導による別の活性化システムの導入により薬剤の非特異的な影響を除外するため、発現誘導用プラスミドコンストラクトを注文した。 令和4年1月に発注済であるが、製品の作成・品質検査に時間がかかるとのことで今年度中の納品が無理との事であった。そのため、支払い処理はまだおこなわれていないがすでに発注済みである。また、この支払いがおこなわれたとしても千円程度の予算が残るが、無理に使用頻度が低い物を発注するよりも次年度の予算とまとめて使用した方が有意義であると判断した。
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