2023 Fiscal Year Annual Research Report
多機能性チロシンキナーゼ阻害薬の創出とがん光線力学療法への応用研究
Project/Area Number |
21K07215
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
遠藤 良夫 金沢大学, がん進展制御研究所, 准教授 (30211783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都 義浩 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (20304553)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光線力学的治療 / 5-アミノレブリン酸 / チロシンキナーゼ阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
5-アミノレブリン酸(ALA)は、がん細胞内でヘム生合成経路の酵素群により光感受性物質であるプロトポルフィリンIX(PpIX)に変換されることから、がんの光線力学療法に応用されている。本研究では、多様ながんの診断や治療に広くALAを利用可能にすべく、ALAとの併用により治療効果を増強する低分子化合物の探索研究を実施した。具体的には、分子標的薬および抗がん剤耐性克服薬としての機能を有する多機能性のALA-PDT効果増強剤の開発を目指し、ABCG2阻害作用も併せ持つチロシンキナーゼ阻害薬を結合した新たなシッフ塩基化合物を創出することを目的とする。我々は、これまでの研究でALAとの同時処理により細胞内PpIX量を増加させてPDT効果を増強するシッフ塩基化合物TX-816を見出した。このTX-816は水溶液中で加水分解を受け、活性本体である3,5-ジクロロサリチルアルデヒド(DCSA)と2-クロロ-4-ニトロアニリン(CNA)に分解するが、令和3年度および4年度の研究では、このCNAをダサチニブに置換したシッフ塩基化合物、YS3-35やYS3-35の炭素-窒素二重結合を還元的アミノ化したYS6-39を合成しALA-PDTの効果増強活性を比較検討した結果、YS3-35はYS6-39やダサチニブよりも強いALA-PDT効果増強活性を示すことを明らかにした。令和5年度では、ゲフィチニブにDCSAを導入した新たなシッフ塩基化合物(YS6-107)を合成した結果、YS6-107はゲフィチニブよりもALA処理後の腫瘍細胞内PpIX蓄積を強く促進し、高いALA-PDT効果増強活性を示すことを明らかにした。以上の結果より、ABCG2を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤にDCSAを導入したシッフ塩基化合物は光線力学的治療における多機能型の効果増強剤の開発において有用なリード化合物となることが確認された。
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