2023 Fiscal Year Annual Research Report
Hippo経路分子MOB1に着目したEGFR変異陽性肺癌の新規標的治療法開発
Project/Area Number |
21K07220
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 謙太郎 九州大学, 医学研究院, 准教授 (00536849)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | EGFR遺伝子変異陽性肺癌 / Hippo-YAP経路 / Serum deprivation / Apoptosis |
Outline of Annual Research Achievements |
ドライバー遺伝子変異として知られ上皮成長因子受容体遺伝子(EGFR)変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)細胞において、増殖と生存を決定するEGFR特異的なメカニズムは不明なままであった。我々は本研究において、細胞の増殖と生存を制御するHippoシグナル伝達経路に着目し、EGFR変異によるHippoシグナルの下流に存在する転写共役活性化因子であるYes-associated protein(YAP)の機能的変化を調べた。血清欠乏の条件下で、上皮成長因子(EGF)は変異型EGFR陽性のNSCLC細胞株でYAPの活性化を誘導したが、EGFR野生型(WT)では誘導しなかった。同様のEGF刺激によるYAPの活性化は、変異型EGFRを強制発現させたA549肺がん細胞では明らかであったが、WT受容体を過剰発現させた細胞では認められなかった。さらに、EGF刺激により、WT型EGFRを過剰発現しているA549細胞では血清欠乏の条件下においてアポトーシス細胞死を誘導したが、変異型EGFRを発現している細胞ではEGF刺激によるアポトーシス誘導に抵抗性を示した。ところが、YAPをノックダウンすると変異型EGFR発現細胞においても、EGF刺激によるアポトーシス誘導の割合が有意に高くなった。この結果は、YAPの活性化が、EGFR変異NSCLC細胞のEGF誘導アポトーシスに対する抵抗性獲得の一機序として機能していることを示すものである。以上の結果から、EGFR変異陽性NSCLCにおいては、活性化されたYAPが特異的な生存シグナルとして機能していることが示された。
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