2022 Fiscal Year Annual Research Report
複数のがん分子標的治療薬の効果を左右する薬剤耐性・感受性規定因子の統合的研究
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21K07226
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉本 芳一 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (10179161)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん分子標的治療 / 薬剤耐性 / がん幹細胞 / トランスポーター / シグナル伝達 / 細胞周期チェックポイント |
Outline of Annual Research Achievements |
WEE1阻害薬adavosertib、CHK1阻害薬prexasertibは、細胞周期のG2/Mチェックポイントに作用して抗腫瘍効果を示す。ヒト乳がんMCF-7細胞より樹立したadavosertib耐性細胞およびprexasertib耐性細胞は、adavosertibおよび3種のCHK1阻害薬に数倍から数十倍の交差耐性を示した。cDNA microarray解析より、これらの耐性細胞でPI3K-AKT経路の活性化が示唆された。また、AKT阻害薬は耐性細胞のadavosertib耐性を低下させた。Myr-AKT1を強制発現させたMCF-7細胞は、adavosertibと3種のCHK1阻害薬に耐性を示した。以上より、AKTはWEE1阻害薬およびCHK1阻害薬の効果規定因子であると考えられた。 Rho GTPase-activating proteinのファミリーに属するSYDE1がP-糖タンパク質(P-gp)と結合することを示した。SYDE1を強制発現させたヒト胎児腎HEK293細胞およびヒト大腸がんSW620-14-4細胞で、P-gpの発現量の増大が観察された。しかしMDR1 mRNAの発現量には変化がなかった。SYDE1導入細胞のvincristineおよびdoxorubicinに対する耐性度の比較から、SYDE1はP-gpのこれらの薬剤の基質認識には影響しないと考えられた。SW620-14-4細胞をcycloheximide処理すると、細胞膜上のP-gpの発現が減少したが、SYDE1導入細胞ではP-gpの発現量は変わらなかった。以上より、SYDE1はP-gpの細胞膜上の安定性を向上させてP-gpの発現量を増大させたと考えられた。 ヒト大腸がんHCT116細胞にSLUG遺伝子を導入して上皮間葉転換(EMT)を誘導した116/slug細胞は、幹細胞性を有するSP細胞を高率に含み、種々の抗がん剤に耐性を示した。116/slug細胞およびヒト肺がんA549細胞に含まれるSP細胞の割合は、HDAC6の阻害活性を持つ3種のHDAC阻害薬の処理により低下した。116/slug細胞、A549細胞をHDAC6のsiRNAで処理すると、SP細胞の割合が低下した。以上より、これらの細胞のSP細胞の維持にはHDAC6が関与していることが示唆された。
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Research Products
(16 results)