2021 Fiscal Year Research-status Report
APEX multi-labels, large field 3D electron microscopy analysis for highly dense brain networks
Project/Area Number |
21K07254
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
滋野 修一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90360560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 真 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 教授 (10222019)
岡 雄一郎 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 講師 (30614432)
疋田 貴俊 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (70421378)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コネクトミクス / 3D電顕 / 線条体 / 巨大シナプス / 脳 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、進展状況を3段階に設定している。現時点で、段階1である電子タグを用いた連続走査型電顕手法はマウスの大脳皮質と線条体において確立できた。現在、段階2である大量画像処理とモデリング技術の調整段階にまで進展している。 段階1において、電子タグAPEX多標識手法を脳の線条体に適用し、超薄切片の連続的な撮影と大量画像の一括処理を実施した。立体構築により、これまで光学顕微鏡下では観察が困難だった微小回路やシナプス、スパインなどを細胞タイプ別に識別することに成功した。線条体では、APEXを発現する際に想定以外の場所で黒質化が起こったが、染色手法の改良により期待通りの長距離・短距離性の投射経路を同定することを可能にした。また、発達期の脳を用いて改良を加え、胚期の子宮内電気穿孔法を用いて標本作成と観察が成功した。 段階2において、標識された回路を手動もしくは自動で機械認識させる技術を発展させた。独自に手動標識で作成した教師データを基礎として、3D U-netやFlood filling networkを用いて学習させ、軸索と樹状突起を機械識別させた。研究の主目的である、線条体中型有棘介在神経群(MSNs)の相互連結を追跡し、その結合特性を解明した。その結果、これまで視床で同定された巨大シナプスが豊富に存在していることを発見した。さらに本手法の優位点である全結合同定を行い、シナプス周辺の結合回路をこれまでにない高密度で同定し、複数の細胞タイプが、単一シナプス場に情報収束する、新しい脳の極小回路像を作成することができた。結果の一部は国内外の学会で発表済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
段階1では、電子顕微鏡で可視化できる電子タグAPEXマルチラベル手法をマウス脳の線条体に適用し、広域大量画像の一括画像処理を完成させた。立体構築により、シナプスや回路を識別、三次元モデルを作成することに成功した。大脳皮質の体性感覚野S1領域における第5層のニューロンを対象に、APEXをミトコンドリアで局所発現、また同個体の脳で皮質運動野の細胞体の細胞質にAPEXを局所的に発現させ、軸索投射先である線条体で投射回路を二重標識した。さらに発達期の脳を用いて、固定法や染色条件について改良を加えることにより、子宮内電気細孔法でも標本作成が成功した。しかしAPEXの発現と同時に蛍光標識として導入したコンストラクトの発現は、想定以上にAPEXのそれと発現細胞が異なっており、段階3で目指しているCa2+蛍光イメージング後に、電顕用細胞の固定を行う実験を慎重に検討するべき結果が得られた。段階2では、APEXで標識された回路を手動もしくは自動で機械認識させる技術の発達を試みた。この手法は、複雑な回路の識別時間を大幅に短縮することが可能である。既に大脳皮質で報告のあるU-netやFlood filling networkを用いて線条体ので回路を機械学習させ、軸索と樹状突起を機械識別させることに成功した。研究の主目的である線条体中型有棘細胞群の相互連結を識別し、その結合特性を解明した結果、これまで視床で同定されている巨大シナプスが豊富に存在していることを発見した。さらに本手法の優位点である全結合同定を行い、シナプス周辺の結合回路を全同定し、複数の細胞タイプが、単一シナプス場に情報連結する新しい像を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度からは段階2を完了し、段階3に移行することを目指す。段階2で明らかになったように、Flood filling networkによる機械認識手法ではシナプスレベルの微細回路が識別できなかった。この点を改良するために、より学習時間を長くすること、観察対象をより限定すること、そしてネットワーク自体の局所的な改善を試みる。同時に、神経生物学的な発見においては、巨大シナプス場に収束、もしくは拡散する回路をさらに詳細に解明する。特に、今回の研究において認識した細胞タイプ毎の連結パターンを特定する。段階3におけるCa2+イメージングとAPEXの併用においては、X-CAMPコンストラクトは既に一部作成が完了しているので、マウス脳に共注入して、細胞活動情報と、今回同定した巨大シナプス場の活動情報を入手、画像モデルとして再構築することを考えている。また、multi-beam SEMを用いた画像取得の大規模化は段階2の研究で成功している。しかしレンダリングモデルの作成には時間が必要であり、画像処理コードを一つずつ運用・検証していく段階を実施していく。結論として、画像処理手法はさらなる改善を段階的に進め、一連の作業工程の効率化を行い、大脳皮質から線条体への情報収束原理を、極小回路レベルで明らかにしたい。
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