2021 Fiscal Year Research-status Report
Neural mechanisms of a knowledge reorganization in the human brain
Project/Area Number |
21K07264
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
倉重 宏樹 東海大学, 情報通信学部, 講師 (80513689)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 脳 / スキーマ / 学習 / 記憶 / ヒト / EEG / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
心理学では,特定内容についての組織化・システム化された知識の枠組みをスキーマと呼ぶ.スキーマの顕著な特質は,それが(学習・思考を通じ)適応的に変化することである.スキーマの適応は大きく2つに分けられる.一つはスキーマ同化で,これは既存スキーマを大きく変えることなく新しい情報を受け容れる適応をいう.もう一つはスキーマ調節で,これは既存スキーマの構造それ自体を修正して行う適応である. 本研究では特にスキーマ調節に注目する.スキーマ調節は自身の既有の知識枠組みに再編成を起こす現象であり,成長・発展を続ける柔軟な「知」には不可欠なものである.一方,スキーマ調節は知識を不安定にするものでもあるから,それほど頻繁には起こらない.実際,種々の心理学実験からスキーマ調節はスキーマ同化に比べて起こし難いことが示唆されている. このようなスキーマ調節の現象としての起こりづらさが,その神経メカニズムの解明を難しくしてきた.実際,これまでのスキーマ適応の神経科学研究はほぼスキーマ同化に関するものだった.これを打破するためには,スキーマ調節を十分な確度で引き起こす実験課題が必要である. これを踏まえ,今年度はスキーマ調節を効率的に起こすための「逆転論述課題」という実験パラダイムの開発を行った.この行動実験による評価は第44回日本神経科学大会にて発表された.さらにこの課題をEEG実験に適用し,新たな情報がスキーマ調節を促す脳メカニズムと,既存情報がスキーマ調節によって変更を受ける脳メカニズムを検討した.ここからとくに,スキーマ調節が特定の周波数帯域の脳活動に関与するものであるという結果が得られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初実験計画ではEEGのみならずfMRI計測による検討も行う予定であった.とくに,これまでスキーマ同化の研究で行われてきた実験の多くがfMRI計測を用いたものであったことから,それとの対比を明らかにする意味で,fMRI実験を中心に据えた計画を立てていた.しかしCOVID-19の影響により,使用予定であったMRI実験施設が使えなくなり,EEG実験を中心にするように計画の変更を余儀なくされた. これは予定外のことであったが,しかしながら,EEG実験はMRI実験に比べて装置が簡便であるために早いペースで実験を行うことが可能であり,これによって検討する実験課題としては当初予定以上のものを行えた. 以上を踏まえた総合的判断から,現状において研究はおおむね順調に進展しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず今年度に行った「新たな情報がスキーマ調節を促す脳メカニズム」を検討するEEG実験と「既存情報がスキーマ調節によって変更を受ける脳メカニズム」を検討するEEG実験はまだ完遂しておらず,これを次年度早々に仕上げて論文の執筆を行う. 加えて,次年度はfMRI実験の方も実施できる見込みであるため,EEGを用いて検討してきたこれら二つの事項をfMRI計測によっても調べる.さらに,課題誘発の脳活動のみならず,安静時脳活動や構造MRIも検討することにより,スキーマ調節の起きやすさの個人差に関わる脳基盤の解明も行う.
|
Causes of Carryover |
COVID-19の影響により予定していた国外の学会出張が取りやめになり,その旅費及び参加費が執行されなかったこと,およびやはりCOVID-19の影響によりMRI施設が使用できなくなり,その利用料が執行されなかったことがとくに大きな理由である. 次年度はMRI施設が利用できるようになる見込みであるので,今年度分の実験も行っていくことで,次年度に繰り越された予算を執行する.加えて,COVID-19の状況にもよるが,今年度は国外への学会出張も行う予定であり,これによっても予算の執行を行う.
|