2021 Fiscal Year Research-status Report
他者の行動情報処理における側頭ー前頭皮質連関の解明
Project/Area Number |
21K07267
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
二宮 太平 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (40586343)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | メンタライジングシステム / マカクザル / 上側頭溝中間部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、実在・生物性の異なる他者の行動が、社会的認知機能を担う脳領野および脳領野間の活動にどのように反映されているのかを明らかにすることを目的とする。 本年度は、他個体と行動選択および行動観察を繰り返す社会的行動選択課題を遂行中の、マカクザル上側頭溝中間部(mid-STS)から神経活動の測定をおこなった。本物のサルと課題をおこなう条件、録画再生したディスプレイ上の他個体と課題をおこなう条件、ディスプレイ上の棒状の物体(映像物体)と課題をおこなう条件という、個体の実在・生物性が異なる3条件を設定した。その結果、mid-STSには主に、自分が行動選択している時に活動する自己ニューロン、相手が行動選択しているのを観察している時に活動する他者ニューロン、そのどちらでも活動するミラーニューロンの、3種類のニューロンが存在することを明らかにした。これらの中で、他者ニューロンが最も多く、全体の半分を占めていた。また他者ニューロンの中には、他者が予想と異なる行動をおこなった際に特に活動を上昇させるものがあったことから、mid-STSニューロンの一部は、他者の行動の予測誤差を表現している可能性が示唆された。さらに他者ニューロンの多くは、ディスプレイ内の他者ではなく、実在の他者と直接対面してタスクをおこなう際に、より強く応答した。一方でディスプレイ内の他者に対する反応は、映像物体と同等の比較的弱い反応であった。これらの結果から、mid-STSニューロンは他者の行動やその予測誤差に反応していること、およびディスプレイ上ではなく目の前にいる他者に対して、強い反応を示すことが明らかになった。 以上の結果を原著論文としてまとめ、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌に報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標は、[1] mid-STSおよびMPFCにおける、他者の実在・生物性に関する情報表現の違いを、単一神経細胞レベルで明らかにする、[2] 他者の実在・生物性の違いが、mid-STSおよびMPFCの相互作用にどのように反映されるのかを、単一神経細胞活動およびLFPを用いて明らかにする、[3] ウイルスベクターを用いた二重遺伝子導入システムにより、神経路選択的に神経活動を操作して、実在・生物性を異にする他者の行動情報処理におけるmid-STS―MPFC神経路の役割を因果的に検証する、の3つである。 2021年度末までに、mid-STSにおける他者の実在・生物性に関する情報表現の詳細を解明することができ、既に報告済みであったMPFCにおける情報表現との違いが明らかになり、目的1を達成できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度までに、mid-STSにおける他者の実在・生物性に関する情報表現の違いを、単一神経細胞レベルで明らかにすることができた(目的1の達成)。今後は、mid-STSとMPFCから単一神経細胞活動およびLFP活動の同時計測をおこない、当該2領野間の相互作用の解析をおこない、他者の実在・生物性に関する情報がどのように表現されているのかを明らかにする(目的2)。これらの解析が終わった後、ウイルスベクターを用いた経路選択的な神経活動操作実験をおこない、mid-STS―MPFC神経路の他者の行動情報処理における役割を因果的に検証する(目的3)。
|
Causes of Carryover |
主に、予定していた出張がCovid-19の影響により中止になったことにより、次年度使用額が生じた。当該助成金については、2022年度におこなうデータ解析で用いる機器の購入に充てる予定である。
|
Research Products
(4 results)