2023 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病の神経炎症における免疫系応答の役割解明
Project/Area Number |
21K07273
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小峯 起 名古屋大学, 環境医学研究所, 講師 (00456211)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / ミクログリア / 疾患関連ミクログリア / 免疫細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症の原因として最も頻度の高いアルツハイマー病(AD)は、老人斑(アミロイドβ蓄積)、神経原繊維変化(リン酸化タウの蓄積)、神経炎症(グリア細胞の活性化)を病理学的特徴とする。最近の全ゲノム関連解析により、ミクログリアや免疫系に関連するADリスク遺伝子が同定されたことや、AD患者の免疫系の変化が観察されることから、神経炎症と免疫系に注目が向けられている。従来の報告から、ADにおける神経炎症は、免疫系とミクログリアの相互作用による神経傷害/保護機能が複雑なバランスで成り立っていることが予想されているが、免疫系の応答の役割を直接示した報告はない。本研究は、末梢免疫応答性の異なる2つの系統(C57BL/6:Th1優位、BALB/c:Th2優位)の遺伝背景を持つ2種のADモデルマウス(APP-KI(B6)、APP-KI(Balb))の表現型を比較し、AD病態における免疫系の応答の役割の解明およびそれに関与するミクログリアや免疫細胞の亜集団を同定することを目指し、研究を進めている。今年度は、前年度のシングルセルRNAシーケンスのデータを詳細に解析し、両ADモデルマウスにおける病態関連ミクログリア(DAM)のクラスター集団の内、特に分布が異なる集団で特異的に発現するマーカー遺伝子を同定することができた。また、そのマーカーに対する抗体を用いて組織解析したところ、Aβ凝集近傍にそのマーカーを発現するミクログリアが存在することが判明した。今後、Aβ凝集近傍に集簇するこのミクログリアの細胞数などを経時的に解析し、Aβ凝集形成とこのミクログリアの集簇の連関の有無などについて明らかにする予定である。本研究で発見されたことは、免疫系の病態関与や新たな病態関連ミクログリアの同定に繋がる可能性があるため意義深いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、末梢免疫応答性の異なる2種類のADモデルマウスおよび野生型マウスの脳におけるシングルセルRNAシーケンス解析を進めた。その結果、両ADモデルマウスにおける病態関連ミクログリア(DAM)のクラスター集団の内、特に分布が異なる集団で特異的に発現するマーカー遺伝子を同定することができた。しかしながら、組織解析によるその集団の意義づけや、ELISAによる脳内Aβ量の定量解析に遅れが生じたため、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの解析により、末梢免疫応答性の異なる2種類のADモデルマウスの認知機能障害に差があること、ミクログリア亜集団に違いが見られることが判明し、その集団の特異的マーカー遺伝子を同定した。今後は、同定されたミクログリア亜集団のマーカー分子などを用いて組織解析を行い、Aβ近傍に集簇する細胞数などを経時的に解析し、Aβ凝集形成とこのミクログリアの集簇の連関の有無などについて明らかにする。さらには、脳内のAβの定量比較等も正確に行い、Aβ蓄積や神経傷害との関係についても明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度は、シングルセルRNAシーケンス解析をさらに進めることができたが、詳細な組織解析やELISAによる脳内Aβ定量解析の実施が次年度にずれこんだため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、ELISAによる脳内Aβ定量解析に用いる試薬や組織解析に用いる抗体、試薬等に使用予定である。
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