2021 Fiscal Year Research-status Report
オリゴデンドロサイトの力覚機構の解析と白質障害治療研究への応用
Project/Area Number |
21K07278
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
清水 健史 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (60398237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛田 秀樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (00305525)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / ミエリン / 張力センサー / 蛍光共鳴エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、オリゴデンドロサイトで発生する力を可視化するために、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)システムを用いた張力センサープローブを使用し、蛍光寿命顕微鏡法を用いてFRET強度を計測した。 まず初めに、オリゴデンドロサイトがミエリンを形成する過程で産生される「力」の解析を試みた。中枢神経系には太い神経軸索と細い神経軸索が混在しているが、それぞれに適したミエリン形成をすることが高次脳機能の発現に極めて重要である。しかしながら、軸索径に応じたミエリン化の制御メカニズムは未だ明らかになっていない。そこで、ポリスチレン製ナノファイバーを異なる太さに調製し、それぞれに対してミエリン形成するオリゴデンドロサイトが惹起する「力」の計測を行った。その結果、太いファイバーに対してミエリン化しているオリゴデンドロサイト突起では、力の産生が大きく、また形成される接着斑のサイズが大きいことが明らかになった。また、単一のオリゴデンドロサイト内でもファイバー径に応じて張力の変化が検出されたことから、細胞の分化程度に依存しない物理的な現象であることが確認できた。 これらの結果から、太さの異なる軸索に応じてそれぞれ物理的な「力」が惹起され、接着斑から細胞内へシグナルが駆動され、ミエリン形成が制御される新しい機構が提唱された。これら結果を投稿し、リバイス実験を経て、学術雑誌への掲載に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、下記3つの大まかな研究計画に基づいて実施している。 (1)張力センサーによりOL細胞で生じる「力」を可視化するシステムを構築する (2)力学的刺激を負荷できる培養デバイスを確立し、詳細なOL力覚機構を明らかにする (3)脳組織内で生じる「力」を可視化するライブイメージングを行い、さらに低酸素虚血性白質障害(NWMI)モデルラット脳内の力学的環境を操作し「力」の作用を検証する この内、(1)については、既に完遂しており、学術雑誌への掲載も行うことができた。また(2)についても、既に培養デバイスの確立に成功していることから、進捗状況は概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
力学的因子に応答して活性化されるOL細胞内シグナルを解析する予定である。力学的刺激を負荷できる培養デバイスを使用し、OL細胞内で変動するメカノトランスダクションをマススペクトル解析や生化学的手法により精査する予定である。 また、低酸素虚血性白質障害(NWMI)モデルラット脳組織内においてOLが感受する「力」の作用を検証するため、張力センサーを遺伝子導入したOL前駆細胞をNWMIモデルと健常ラットの脳に移植する予定である。NWMIモデルはラット総頸動脈の閉塞と低酸素状態へ暴露することによって作製する。そして、NWMIモデル脳スライスを作製した後、張力センサーをライブイメージングし、移植されたOL細胞で惹起される「力」を計測して、健常ラット脳へ移植した場合と比較する計画である。
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Causes of Carryover |
他の研究費を優先的に使用したことと、コロナ禍で学会がオンライン開催となり、旅費を使用しなかったこと等が理由である。 次年度も引き続き、主として物品費として使用し、学会が現地開催となれば旅費も使用する計画である。
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