2023 Fiscal Year Research-status Report
オリゴデンドロサイトの力覚機構の解析と白質障害治療研究への応用
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21K07278
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Research Institution | Shokei Junior College |
Principal Investigator |
清水 健史 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 教授 (60398237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛田 秀樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (00305525)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / 小脳 / リモデリング / 力覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、脳内出血モデルラットに対しリハビリテーション(前肢強制使用)を行うと、皮質―脊髄路から皮質―赤核路への代償経路が誘導され、運動機能の回復が促進することを報告したが、運動調節系の小脳での動的な適応変化が惹起されるか否かは明らかでない。今回、オリゴデンドロサイト(OL)リモデリングの観点から小脳の運動調節系の適応変化に着目し、前肢伸長運動による脳障害後リハビリテーションが小脳OLに影響を与えるかどうかを合わせて検討した。また本研究課題では、OLが力学的な因子の影響も受けることを研究してきた。 脳障害モデルラットに対し前肢の伸長運動のリハビリテーションを脳障害の1~8日後まで行わせると、OLリモデリングが惹起され、前肢運動機能の回復が促進されることが示された。一方で、小脳におけるOL分化・新生を阻害剤の脳内投与により抑制すると、前肢伸長運動による運動回復効果が減弱することが分かった。これらの結果から、障害された神経機能をリハビリテーションによって再構築する過程で、OLリモデリングが運動機能回復に作用したと考えられる。また既に蛍光標識した細胞をセルソーターにより精製する条件検討を行い、さらに小脳核に局在する蛍光標識細胞を実体顕微鏡下で確認しながらパンチングアウトする方法も確立した。今年度は、代表者が異動したことに伴い教育研究環境が大きく変化したため、セットアップに時間を要した。そのため、本研究課題では1年間の期間延長申請を行い、次年度から再度、計画に沿って研究を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、下記3つの大まかな研究計画に基づいて実施している。 (1) 張力センサーによりオリゴデンドロサイト(OL)細胞で生じる「力」を可視化するシステムを構築する (2) 力学的刺激を負荷できる培養デバイスを確立し、詳細なOL力覚機構を明らかにする (3) 障害を受けた小脳において外的環境の変化に応じてOLリモデリングが惹起されるかどうかを解析する。また、脳障害モデルラット脳内の力学的環境を操作し「力」を可視化するライブイメージングを行い、「力」の作用 を検証する。その際、OL細胞内シグナルの変化を解析するために、蛍光標識したOLをセルソートし、RNAシーケンスにより網羅的に遺伝子変動をスクリーニングする。 この内、(1)については、既に完遂しており、学術雑誌への掲載も行うことができた。また(2)についても、既に培養デバイスの確立に成功している。(3)については、脳障害後の小脳において、リハビリテーションによって新生オリゴデンドロサイトと成熟OLが増加することを既に見出している。また蛍光標識した細胞をセルソーターにより精製する条件検討を行い、また小脳核に局在する蛍光標識細胞を実体顕微鏡下で確認しながらパンチングアウトする方法も確立した。今年度は、代表者が異動したことに伴い、教育研究環境が大きく変化し、セットアップに時間を使わざるを得なかった。ただし、本研究課題では1年間の期間延長申請を行ったため、残り1年という観点から判断すると、変わらず進捗状況は概ね順調であるとの総合的な判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット脳内の蛍光標識細胞からRNAを抽出することによりRNAシーケンスを行い、脳障害後のリハビリテーションによるオリゴデンドロサイト(OL)リモデリングによって変動する遺伝子を網羅的に解析する計画である。また、力学的因子に応答して活性化されるOL細胞内シグナルを解析する予定である。力学的刺激を負荷できる培養デバイスを使用し、OL細胞内で変動するメカノトランスダクションをマススペクトル解析や生化学的手法により調べる予定である。
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Causes of Carryover |
名古屋市立大学から熊本県にある尚絅大学へ異動し、研究設備や教育研究環境が著しく変化したことが主な理由である。 次年度も引き続き、主として物品費として使用し、学会参加のために旅費も使用する計画である。
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