2021 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of dystrophin in blood-brain barrier and its relevance to epilepsy
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21K07279
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
藤本 崇宏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10446114)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / BBB / アストロサイト / ジストロフィン / ジストログリカン / タグ挿入マウス / シナプス / 分子複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が樹立したDp71特異的タグ挿入マウスを用いて生後の脳とくに海馬と大脳皮質における内在性Dp71蛋白の発現分布を解析した。脳全体を見渡すとDp71は血液脳関門部(BBB)に高発現していたが、興味深いことに海馬においては歯状回分子層においても有意な発現が観察され、ドット状の発現様式を示した。シナプスマーカー蛋白と比較することで、Dp71がGephyrin陽性の抑制性ポストシナプスに限局し、PSD95陽性の興奮性ポストシナプスには存在しないことを明らかにした。海馬由来初代培養系で詳細に検討した結果、Dp71は未熟な神経細胞では低発現レベルで維持されており、有意な局在化は示さないが、成熟シナプスを形成した状態では、Gephyrin陽性の抑制性ポストシナプスに限局することが確かめられた。また、アストロサイトの細胞質とくに足突起や細胞膜近傍においてもDp71の集積が観察でき、生後脳においてはアストロサイト足突起が形成するBBBと海馬歯状回神経細胞の抑制性ポストシナプスにおけるDp71の機能を明らかにすることが重要であると判断できる。 生後脳を材料としてDp71が形成する分子複合体を免疫沈降法で回収し、構成蛋白をマス解析で網羅的に同定した。筋細胞においてDp427(全長型ジストロフィン)が形成する分子複合体の構成蛋白の多くが、Dp71とも相互作用していることが示唆されたが、新規性が高い知見として、Insyn1が相互作用蛋白の一つとして検出された。Insyn1は抑制性シナプスに局在するアダプター蛋白として同定された経緯があることから、海馬歯状回におけるDp71-Insyn1機能のさらなる解析の重要度は高い。その他、DtnbがDp71とともに抑制性シナプスに局在すること、DtnaがDp71とともにBBBに局在することが示され、細胞種によるパートナーの使い分けの今後の意義づけが待たれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Dp71特異的タグ挿入マウスを用いることで、これまで困難であった内在性Dp71の組織・細胞内局在の観察が可能になった。特異的に検出するための染色条件や生化学的に分子複合体を取り扱う条件が整い、今後の研究の進展が見込める。これまで曖昧であったジストロフィン産物のシナプス局在に関してもDp71が海馬歯状回に高発現していることを明らかにするとともに、Dp427が海馬CA1に高発現することとの対比を明確に示したことは、今後の「てんかん」病態とジストロフィン産物の関係性を論じるうえで重要な知見となった。 解決すべき事項として、アストロサイト培養系が挙げられる。アストロサイトの不死化に成功したが、Dp71が低発現状態に陥るという予期せぬ現象に直面した。これに関しては不死化細胞でなく初代培養状態でDp71の分子側面の検討を加えることを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
てんかん脳病態におけるジストロフィンとくにDp71の関りを明らかにするためには、シナプスとBBBの両部位でのDp71機能に着目した方策が必要となる。新たな取り組みとして、今年度よりマウスin vivoにおけるDp71とジストログリカンを代表とする相互作用蛋白群を対象範囲に入れられるように、アデノ随伴ウイルスベクターの適用を試み、これら分子群のBBBおよびシナプスにおける関係性をプロテオスタシスの観点から解析する。マウスin vivoと初代培養in vitroの両輪を回すことで、分子・細胞・組織レベルの研究を可能にする。 これまで順調に進んでいるタグ挿入マウスを用いたDp71プロファイリングに関しては大脳・海馬以外の脳領域とくに小脳に対象を拡げる。
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Causes of Carryover |
研究開始時の予想を上回るペースで結果が出せた部分があり、2年目の予算を一部前倒し請求した経緯がある。発生した次年度使用額は358円であり、前倒し請求後は概ね計画的に使用されている。物品の一部例えばCustom Oligoプライマーは会員割引が適用されたこともあり、見積りより低額に抑えられた。
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