2021 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質運動野から体性感覚野への投射回路の除痛効果の解明
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21K07285
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
尾崎 弘展 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30747697)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 痛覚 / 運動 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は一次運動野に、光照射によって神経活動を抑制することができる光遺伝物質(Jaws)を発現させ、運動野から体性感覚野への投射経路の活動を選択的に抑制する実験を行った。運動野にJawsを発現させた場合、想定どおり、運動野神経細胞の活動を光照射により活動を抑制することができた。しかしながら、運動野の神経活動の抑制のタイミングを体性感覚野の活動に合わせてどのように制御と体性感覚野の活動を効果的に調整できるかについては、より詳細な検討が必要であることが明らかとなった。また、Jawsによる抑制効果が不十分な場合に、Jawsの発現が弱く光強度が不足している可能性が考えられたため、光源をLEDからレーザーに変更することで、光強度・効果を高める必要があることが判明した。 運動野から投射を受ける一次体性感覚野においては、痛覚と触覚がともに処理されているが、齧歯類において、痛覚を選択的に処理しているdysgranular領域と触覚を選択的に処理しているバレル領域の活動を比較した。その結果、痛覚刺激入力時において、バレル領域の神経活動が抑制される一方で、触覚刺激入力時にはdysgranular領域において神経活動が抑制される現象が観察された。これは触覚と痛覚が互いに抑制し合う現象が、大脳皮質レベルで引き起こされていることを示している。さらに重要なことは、この相互抑制の現象が大脳皮質の異なる層で見られたことである。これは、一次体性感覚野内での抑制性細胞を介した相互抑制のみならず、一次体性感覚野内へ投射する他領域との結合を介したものであることが示唆され、運動野からの投射を介した抑制性入力が関与している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による物流停滞の影響で予定した物品の到着が本年度に間に合わず、予定していたシステム(多細胞同時記録系)改良の遅延を余儀なくされたが、従来の手法を用いた記録系を用いて、大脳皮質運動野における抑制性光遺伝物質(Jaws)の動作確認や痛覚応答領域に対して触覚入力が抑制をかける現象の発見に繋がり、次年度の論文発表に繋がる成果を得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は物品の到着後により多くの細胞を同時に細胞外電位記録できるシステムを構築し、行動中の動物から実際に痛み刺激入力時の神経活動を記録するとともに、運動野にJawsを発現させて、運動野選択的抑制による行動および神経活動への影響を調べる。さらに光源をLEDからレーザーへと変更し、より効果的な光強度を得るとともに、様々な部位に照射できるシステムを構築する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍に伴う物流停滞の影響を受け、2021年度中に発注したものの、納期が半年以上となる物品が複数あり、納入される次年度へ繰り越す必要が生じたため。
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