2021 Fiscal Year Research-status Report
TDP-43凝集体を形成する病態モデルの確立と解析
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21K07288
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
鈴木 元治郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (60466034)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プリオン / TDP-43 / 筋萎縮性側索硬化症 / 前頭側頭葉変性症 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞質におけるTDP-43の凝集体形成は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭葉変性症(FTLD)の患者脳内で広くみられる病変であり、病気の進行と密接に関与すると考えられる。神経変性疾患の病因とされるαシヌクレインやタウと同様に、異常細胞から放出された異常TDP-43凝集体が近傍の正常細胞に取り込まれ、正常細胞内のTDP-43の凝集体形成が誘導されるプリオン様伝播により、脳内の広範な範囲でTDP-43の凝集体形成と神経変性が起こると考えられている。しかし、TDP-43凝集体のプリオン様伝播のメカニズムや細胞への毒性などの多くの疑問点は解明されていない。そこで、精製したTDP-43タンパク質から異なる構造のTDP-43多量体を形成し、培養細胞やマウスに導入することにより、異常TDP-43凝集体の形成や神経変性が誘導されるモデル細胞、モデルマウスの樹立とその解析が本研究の概要である。TDP-43タンパク質は大腸菌からの精製が比較的困難であるが、TDP-43タンパク質の様々な方法での精製に成功している。また、精製方法や凝集体形成方法の違いによって異なる構造のTDP-43凝集体の形成にも成功した。形成した凝集体をTDP-43を発現している培養細胞に導入すると、シード能を示しTDP-43の凝集体の形成が誘導された。ヒト患者脳で観察されるTDP-43凝集体の病理には様々なタイプがあることが知られているが、シードとして導入したTDP-43凝集体の構造に依存して、ヒト患者脳で観察される構造多型と類似した凝集体の形態を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TDP-43タンパク質の大腸菌を用いた精製方法を検討し、安定的な精製方法を確立するとともに、精製方法の違いによるTDP-43凝集体の構造の違いを明らかにすることができた。また、凝集体の形成方法を検討することにより、同一のTDP-43モノマータンパク質から異なる構造の凝集体を形成することにも成功した。培養細胞を用いた実験により、異なる構造をもつTDP-43凝集体は、細胞で発現しているTDP-43タンパク質のシードとなり、凝集体形成を誘導することも明らかにし、その凝集体の構造がシードとして導入したTDP-43凝集体の構造に依存していることが明らかになった。ここまでの結果は当初の計画通りであることから、順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
形成したTDP-43凝集体を野生型マウスの脳内に接種し、マウス脳内でもTDP-43凝集体の蓄積が誘導されるかを検証し、精製したTDP-43タンパク質の添加のみによる凝集体蓄積、神経変性の培養細胞モデル・マウスモデルの構築を試みる。また、TDP-43多量体が細胞に取り込まれ、TDP-43凝集体が蓄積し、細胞死を誘導するメカニズムを細胞モデルにより検証する。TDP-43シードによって形成された異常TDP-43凝集体を内在性TDP-43特異的な抗体やリン酸化TDP-43特異的抗体を利用した免疫沈降や、界面活性剤不溶性画分の精製により単離し、結合しているタンパク質群を質量分析により網羅的に同定する。また、TDP-43と結合しているRNAを次世代シーケンス解析により網羅的に同定し、異常TDP-43凝集体の形成により結合しているRNAが変化するかを検討する。TDP-43タンパク質を導入後の様々なタイムポイントでTDP-43と結合している分子群を解析することで、TDP-43多量体の取り込み、内在性TDP-43とのシーディング、内在性TDP-43のリン酸化、細胞死の誘導などの各段階で特異的に関与している因子を同定し、TDP-43タンパク質の凝集体の形成過程とTDP-43凝集体による細胞毒性の機序を明らかにすることを試みる。
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Causes of Carryover |
並行して行っている研究課題について他財団の研究費を獲得することができたため、共通して使用する試薬等の使用額が減少した。また、海外・国内での研究発表を行うことが昨今のコロナ禍により困難な状況が続いていることから支出が減少した。以上の理由により次年度使用額が生じた。今年度は抗体などの試薬・消耗品やパソコンなどの物品等の購入を早い時期から行い、学会へ積極的に参加し知見を深め、学術論文の掲載費を支出するなどにより研究費を計画的に使用することを心掛ける。
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Research Products
(2 results)