2022 Fiscal Year Research-status Report
超音波診断装置を用いて脂肪由来幹細胞を経時的に複数回投与した自家神経移植の研究
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21K07292
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
多田 薫 金沢大学, 保健学系, 教授 (90543645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 修 金沢大学, 医学系, 教授 (60303947)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 末梢神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では超音波診断装置を用いて自家神経移植片にADSCsを投与し、適切な投与方法を明らかにすることを目標にしていた。しかし、この手法では自家神経移植の治療成績を向上させることができなかったため、ADSCsの投与方法について再検討した。文献検索の結果、ADSCsを局所投与ではなく尾静脈から全身投与する方法が有効であると考え、令和4年度からはADSCsの細胞懸濁液を経静脈的に全身投与する方法に関して検討を進めている。 ADSCsはラット鼠径部から2gの脂肪組織を採取して作製し、その後得られたADSCsを500μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に混和して細胞懸濁液を作製した。ラットの左坐骨神経を15mm切除した後に翻転させて縫合する自家神経移植モデルを作製し、移植時に尾静脈からPBSの投与を行った対照群と、ADSCsの細胞懸濁液の投与を行った幹細胞群を作製した。モデル作製後12週時にSciatic function index (SFI)、Autotomy score、前脛骨筋の筋湿重量、前脛骨筋の複合筋活動電位の遠位潜時と振幅に関して評価した。その結果、SFIおよびAutotomy score、振幅に関しては2群間に有意差を認めなかったが、前脛骨筋の筋湿重量、遠位潜時に関しては幹細胞群で有意に良好な結果が得られていた。また、幹細胞群の成績は、以前当科で施行したADSCsの細胞シートを局所投与した群の成績とほぼ同等であることを確認した。 令和5年度は治療成績を向上させた理由について評価するため、モデル作成後に標識した幹細胞を全身投与し、幹細胞の生存期間や生体内分布について評価する。また、自家神経移植片や後根神経節などを採取して軸索や神経細胞体の評価や、各種遺伝子の発現について評価する。さらに治療成績を向上させる方法として、細胞懸濁液の濃度や投与回数に関しても検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞懸濁液の濃度や投与速度など基本的な条件設定は既に終了しており、現在は安定したモデル作製が可能となっている。昨年度の研究では対照群と幹細胞群の成績に有意差を認め、ADSCsの細胞懸濁液の全身投与は自家神経移植術の治療成績を向上させることが確認できた。また、これまでの研究結果について国内で学会発表を行った。進捗状況は順調であり、本年度は治療成績が向上した原因について、病理学的、細胞分子生物学的に評価を進めるとともに、論文作成にも着手する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では理想的な結果が得られているが、研究結果を臨床応用するためには、さらにADSCsの治療効果を高める方法について検討が必要だと考えている。ADSCsの全身投与は局所を展開する必要がないため、小さな侵襲でADSCsを複数回投与することができる大きな利点がある。本年度は複数回投与群についても評価を行い、さらに治療成績を向上させたいと考えている。また、私たちの研究結果を臨床応用するためには、明らかな有効性を示すだけでなく、ADSCsの作用機序を明確にする必要がある。本年度は投与したADSCsの追跡を行うとともに、自家神経移植片や後根神経節を採取して、局所や中枢に与える影響を細胞分子生物学的に評価する計画である。
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Causes of Carryover |
ADSCsを超音波ガイド下に局所投与する当初の研究計画から、尾静脈から全身投与する研究へと変更したため、動物購入費や薬品、備品購入費が当初の予定から変更となりました。
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