2021 Fiscal Year Research-status Report
睡眠時無呼吸症血管イベント抑制に寄与する新規動脈硬化性疾患マーカーの探求
Project/Area Number |
21K07329
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
長谷川 勝彦 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (60328870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大越 章吾 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (70231199)
渡邉 和彦 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (70742758)
廣野 玄 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (80386268)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動脈硬化リスク / マクロファージ / 血小板活性化 / IL-18 / 血小板マイクロパーティクル / SAS / 吹田スコア / 無呼吸指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠時無呼吸症(SAS)が脳血管障害や冠動脈疾患に繋がる恐ろしい病態であることは、まだ社会に広く知られていない。本研究の目的は(1)将来の血管イベントを予測する動脈硬化リスクスコアをSASに適応し、積極的に治療介入すべき群を早期発見すること(2)活性化マクロファージ、活性化血小板、脂質異常の解析データに基づき、動脈硬化高危険因子群を絞り込み、持続陽圧呼吸治療(CPAP)を早期開始することにより重篤な血管イベントを抑制することである。その為に本学睡眠歯科センターに新規受診したSAS症例(n=123)において、 1.年齢、性別、喫煙、糖尿病の有無、血圧、HDL-C,LDL-C,慢性腎臓病(CKD)ステージ各々を点数化し動脈硬化リスクを予測する吹田スコアを応用し、症例対照研究によりSASと非SASとの相違点を抽出することを行っている。この研究の結果、CPAPによる夜間低酸素血症の改善によって有意にAST/ALT値、肝脂肪化レベルが改善することを報告している。この先行研究のデータに基づいてSASにおける新規動脈硬化因子の解析を進めている。 2.マクロファージ・血小板活性化に関連するIL-18、AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)をELISAによって解析しSASと非SASとの相違点を抽出している過程である。 今後上記1,2を総合して、臨床および実験結果より動脈硬化高危険因子群を抽出し、この群に対して血管イベント予防のための早期CPAP治療開始と生活習慣改善指導を行う研究をさらに行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らは日本歯科大学新潟生命歯学部を受診し、持続的陽圧呼吸療法(CPAP)施行した123名のSAS患者を、同学倫理委員会の承認を得た後(ECNG-H-247)研究参加同意を経て、前向きに体重、血圧、臨床検査値、FibroScanによる肝硬度、肝脂肪化レベルを最低半年間追跡調査した。結果CPAPによる夜間低酸素血症の改善によって肝脂肪化の程度が改善することを見出している(Hirono et al. 2021,6, 5112-5125)。 本研究においてはさらに症例数を上乗せし(n=133)、SAS患者における動脈硬化リスクの解析を吹田スコア、AIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)、IL18のELISA解析を行っている。これらの133名に関しては前向き研究であるため臨床データが揃っており、そこに新たなELISAのデータを加えるばかりになっている。 一方、本研究費を用いて申請者らはTECAN(Tokyo)のELISAシステム(InfiniteF50)を購入している。陽性コントロールシステムを用い、この機器の使用に精通したのち、現在AIMとIL-18のELISAの系を用いて上記患者コホートの保存血清(-80度)の解析を進めつつある。申請者らは上記の先行研究において、多変量解析などの統計解析ソフトに精通しているため、今後SASにおける新しい動脈硬化因子の探求を、特にAIMとIL-18に焦点を当て導き出すことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らは過去に活性化血小板とSASの関連性について研究してきた。(岡田康孝ら、日本口腔科学会雑誌 57(3):261~266, 2008.)血小板には、血管の異常発生部位に迅速に到達し、破綻した血管内皮を修復する機能があり、マクロファージには内皮下に侵入した変性脂質を細胞内に取り込んで処理する機能がある。また、マクロファージには脂肪組織に浸潤して炎症反応を惹起する機能がある。従って、SASにおける活性化血小板、マクロファージに着目して解析することは、動脈硬化性炎症の早期発見と早期治療介入に大いに役立つと考えている。マクロファージ・血小板活性化に関連する動脈硬化促進因子に着目し、SASを慢性炎症疾患として解析し、さらに早期腎障害の検出にも着目して動脈硬化高危険因子群を効率的に抽出して早期から治療介入しようとする研究を発展させていく。 更に上記の結果を総合して、臨床および実験結果より動脈硬化高危険因子群を抽出し、この群に対して血管イベント予防のための早期CPAP治療開始と生活習慣改善指導を行う。 次に発展課題として、SASにおける(Ⅰ)異所性脂肪蓄積と動脈硬化リスクスコアとの関連性、(Ⅱ)早期腎障害を予測可能とする新規高血圧・腎バイオマーカーの有用性について実験医学的解析を試みる。
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Research Products
(1 results)