2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel therapy for thrombosis induced by neutrophil extracellular traps
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21K07331
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
通山 由美 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (70362770)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 好中球 / NETs |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、好中球のNETs(Neutrophil extracellular traps)を契機とする血栓形成の分子機構を解明して、血栓症の新規治療法を開発することである。NETsは、好中球のクロマチンが網状構造に変化して、病原体を捕捉する感染防御システムである。近年、NETsが血小板や血液凝固カスケードを刺激して、血栓症を誘発することが注目されている。そこで本研究では、NETs形成に重要な分子と化学反応を見いだし、その制御を通して血栓症の新規治療法を開発する事をめざす。 昨年度に引き続き、S100A8、S100A9についての解析を進めた。S100A8、S100A9は共に、プロテインS100ファミリーに属するカルシウム結合タンパク質である。以前に実施した質量分析において、好中球のNETs形成過程で化学修飾を受ける重要なタンパク質として注目している。これまでの研究成果として、S100A8、S100A9それぞれのノックアウト型好中球モデルを作成し、S100A8のノックアウトでS100A9の発現が、S100A9のノックアウトでS100A8の発現が抑制され、両分子が互いに発現を制御していることを見出した。 引き続き、mRNAの網羅的な発現解析により、S100A8、S100A9のノックアウト型好中球において発現量が有意に低下している遺伝子群を探索した。解析の結果、S100A8およびS100A9のノックアウトにより、I型インターフェロンで誘導されるシグナル分子群の発現が抑制されていることを見出した。ウエスタンブロッティング法による解析でも、同様の傾向が確認され、好中球のNETs形成に関わるタンパク質が、ウイルス感染に対する防御プロセスの一端を担っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NETs形成に重要な役割を果たすと注目してきたタンパク質が、ウイルス感染に対する防御プロセスの一部を担っていることを見出したが、NETs形成との直接的な関連については、解析が進んでおらず、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
好中球のNETs形成に重要なタンパク質として注目してきたS100A8とS100A9が、I型インターフェロンで誘導されるシグナル分子群の発現をコントロールしていること、ウイルス感染に対する防御プロセスの一部を担っていることが示唆された。 下流分子として同定したタンパク質の解析を通して、S100A8とS100A9がウイルス感染を阻止するメカニズムを明らかにすると共に、これら下流分子がNETs形成に与える影響についても解析する。さらにI型インターフェロンによる好中球のNETs誘導や促進のメカニズムについても検討する。その際には、好中球の成熟や分葉核の形態、NETs形成プロセスやNETs放出成分など、多角的な視点から解析する。 加えて、NETs形成を実行、促進する新たな分子候補の探索も進める。質量分析のデータに基づき、好中球のNETs形成過程で生じる化学修飾について、時間経過に沿って再度解析し、ヌクレオソームを崩壊するプロセスで起こる中心的な生体内化学反応と酵素を見出す。 すでにノックアウト型好中球モデルを作成しているP4HB(ジスルフィドイソメラーゼ)、Rab27A(低分子量GTPアーゼ)やSyk(チロシンキナーゼ)については、S100A8、S100A9のノックアウト型好中球モデルと共に、細胞由来のNETs成分による血小板凝集活性について検討する。その際、血小板を直接刺激しないNETs誘導刺激を選択し、野生型好中球モデル由来のNETsによる血小板凝集活性と比較する。フローサイトメーター、蛍光顕微鏡による可視的な手法、生化学的な解析方法を活用して、NETs成分による血小板を介した血栓形成誘導分子を探る。
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Causes of Carryover |
初年度予定していた質量分析(ヒト好中球のNETs形成過程の解析)については、以前に実施した網羅的質量分析のデータを再解析した結果、新規に注目すべき分子を見いだすことができたので実施を見送った。加えて、既存の試薬を有効に活用して新規標的分子の遺伝子編集に取り組むことができたため、次年度使用額が生じた。 今年度は、新たな候補分子も含め、NETs形成プロセスの解明に向けて有効に活用する。
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Research Products
(3 results)