2021 Fiscal Year Research-status Report
骨髄由来免疫抑制細胞を標的とした免疫老化制御の基盤構築
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21K07345
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
堀江 一郎 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 講師 (10609514)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨髄由来免疫抑制細胞 / 老化 / 免疫老化 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,広範な免疫抑制能をもつことで知られる骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC) について,これまでよく研究されてきたがん領域だけでなく,肥満や生活習慣病などの多種多様な疾患と密接に関連することが示唆されてきた.特に,老化関連疾患に至る前段階である免疫老化とも関わる可能性が示唆されていることから,老化とMDSCの関連に注目が集まっている.本研究では,老化モデルを用いて,免疫老化・個体老化におけるMDSCの役割を明確にし,MDSCの機能調節という新たな老化予防のコンセプトを提唱することを目的とする. 本年度はまず,ヒトの加齢に類似し,早期に老化症状を呈するモデルマウスであるSOD1欠損マウスにおけるMDSCの動態に焦点を当てて研究を実施した.従来,本マウスでは,20週齢前後に老化様の表現型 (皮膚萎縮や脂肪肝など) が出現するとされているため,本マウスを繁殖し,16週齢以降の雄性マウスから骨髄,脾臓および各種臓器におけるMDSC数や遺伝子発現を解析した.18週齢まではMDSC数に大きな差は認められなかったものの,20週齢からMDSCの分類型である顆粒球型と単球型の割合に関して,野生型に比べ,欠損マウスにおいて顆粒球側に偏っていることが明らかとなった.一方,この20週齢のタイミングでは,当施設のマウスには,皮膚萎縮などの目立った老化表現型は認められなかった.従って,本研究で見出したMDSCの分化異常は,老化症状に先行して起きる現象であることが示唆され,SOD1欠損マウスにおける早期の老化表現型の出現に寄与する可能性が考えられた. さらに,本年度は,老化によるヒトMDSCの分化に関する解析を可能にするため,HL60細胞からヒトMDSCへ分化させる培養法を確立できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階では,今年度は老化モデルマウスのMDSC動態に関する検討を中心に実施する予定であったが,これらは概ね達成できたと考えられる.当初の想定よりも,MDSC分化に差が認められる時期が遅いと考えられるが,同様に老化関連の表現型の出現も遅延していることから,当施設における飼育環境が影響していると思われる.しかしながら,表現型の出現に先行してMDSC分化に差が現れたことを踏まえると,MDSCの変動と老化遷移の関連性を明らかにすることができたと考えられる.表現型出現の遅延に伴い,繁殖・飼育に時間を要することになったため,実験に使用できたマウス数が想定より少なくなってしまったものの,一方で,動物を使用せずに細胞株のみでヒトMDSCを分化誘導する培養系を確立できたため,概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,引き続き老化モデルマウスにおけるMDSCの動態について詳細に解析を続けるとともに,MDSCを阻害することで老化表現型に影響するか否かの答えを得ることに注力する.また,加齢に伴う顆粒球型と単球型のMDSC分化に対する影響は,老化モデルマウスとともに今年度確立した培養系も併せて用い,評価する.
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Causes of Carryover |
当初の想定よりも,MDSC分化に差が認められる時期が遅かったため,実験に使用できたマウス数が想定より少なり,飼育に関わる費用が減少したことで次年度使用額が生じた.次年度は本来の予算にこの次年度使用額を加えて,老化モデルマウスの使用計画を見直し,老化モデルマウスにおけるMDSCの動態解析を加速させる.
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Research Products
(2 results)