2022 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of efficient leukemia differentiation therapy, and biomarker, through various inhibitors
Project/Area Number |
21K07346
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
高橋 伸一郎 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (40375069)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 白血病分化誘導療法 / キナーゼ阻害剤 / フコシル化阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia: AML)の治療は、大量の抗がん剤を用いた治療が主であるが、副作用など問題も多い。その点、ビタミンAの誘導体である全トランス型レチノイン酸(all trans retinoic acid: ATRA)を用いた急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia: APL)に対する分化誘導療法は、大量抗がん剤と比べマイルドであり治療成績も優れている。しかし、その適応はAPLのみと限られており、より幅広い適応の治療法が待たれている。高齢者のAMLをはじめとした造血器腫瘍に行われている低用量抗がん剤(低用量シタラビン、低メチル化剤)による治療は、通常の治療より負担が少なく、細胞の分化誘導を促進させ治癒を目指すが、効果が低い。そこで、APLのみならず、AML に対するより効果的な分化誘導療法を確立することを目指している。申請者らは、より効果の高い分化誘導剤を同定するために、Cayman社のキナーゼ阻害剤スクリーニングライブラリーを用いて、より分化誘導効果の高い薬物の同定を試み、Triciribine (TCN) (Akt 阻害剤)が有効であること、さらにTCNとp38阻害剤の併用が極めて効果が高い分化誘導療法となることを明らかにした(佐藤裕李ら、2022年7月日本検査血液学会発表)。またこれまでに、N型糖鎖が急性前骨髄球性白血病の分化において減少すること、フコースが減少することが明らかになっている。そこで、フコシル化の阻害(6-Alkynyl Fucose:6-AF)が分化誘導促進効果を有するのではと考え、ATRAと併用し、APL細胞株(NB4、HL-60細胞)に投与したところ、明らかな分化誘導効果を有することが明らかになった(鈴木歩ら、2022年11月日本臨床検査医学会発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖鎖合成阻害剤(Tunicamycin, Castanospermineなど)や 、様々なキナーゼ阻害剤、エピゲノム修飾に関わる阻害剤を、できる限り多く網羅的に検討を行い、よ り効果的な分化誘導薬を見出すことを目指している。令和3-4年度の研究では、キナーゼ阻害剤ライブラリーの70種類以上の化合物を用いて検討したところ、TCNのNB4細胞株における分化誘導活性を見出した。次に我々は、これら阻害剤を組み合わせて用いることで、より効果の高い分化誘導療法を見いだすことができないか、検討を行った。その結果、TCNとp38阻害剤を併用することで、単剤添加と比較し有意な核/細胞質比の減少が認められ、より分化傾向を示すことを見出した(佐藤裕李ら、2022.7月日本検査血液学会発表)。また、これまでに、N型糖鎖が急性前骨髄球性白血病の分化において減少すること、また、フコースが減少することが明らかになっている。そこで、フコシル化の阻害剤(6-Alkynyl Fucose:6-AF)が分化誘導促進効果を有するのではと考え、ATRAと併用し、APL細胞株(NB4、HL-60細胞)に投与したところ、明らかな分化誘導効果を有することが明らかになった(鈴木歩ら、2022年11月日本臨床検査医学会発表)。さらに興味深いことに、APL細胞株では、単糖のフコースの結合を認識するAAL(Aleuria aurantia lectin)を用いたレクチンブロットで、ATRA分化誘導でシグナルが減少し、ATRAと6-AFの併用では、フコシル化が著明に減少することを見出した。すなわち、フコシル化の制御が分化誘導を調節することが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はAPL細胞株(NB4、HL-60細胞)を用いた解析を継続するとともに、様々な急性白血病細胞株、すなわち、急性骨髄性白血病細胞(KG1、PL-21)株、急性単球性白血病(THP-1)株、急性骨髄単球性白血病(MV4-11)株、慢性骨髄性白血病細胞(K562)株などを用いて、独自に見出した6-AFとATRAとの相乗効果解析を行う。当教室は様々な白血病細胞株を有しており、分化誘導解析にも習熟している。各種細胞に6-AFとATRAを添加して 1)フローサイトメトリー(FCM)、定量PCR等による分化マーカー発現量の検討による分化評価、2)AAL-FCM、およびAALレクチンブロットにより、フコシル化の程度と、分化誘導効果との関連を検討する。 3)FCMによる細胞周期、アポトーシスの検討、4)形態変化の観察などをおこなう。これらにより、フコシル化程度をマーカーとした効果予測の可能性を検討する。また、6-AFおよびATRAを単剤および併用にて白血病細胞に添加し、どのような経路が影響を受けているか、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析にて、6-AFにて分化誘導増強効果が認められた責任経路の同定を行う。これにより、新しい効果的な分化誘導増強法の可能性を探索する。
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Causes of Carryover |
概ね予定通りの支出が行われている。
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