2021 Fiscal Year Research-status Report
SMRT KOマウスを用いた骨格筋分化・再生機構の解明と退行性筋疾患治療への応用
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21K07347
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
清水 裕晶 獨協医科大学, 医学部, 助教 (60594398)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SMRT / 骨格筋 / β酸化 / TGF-β / 繊維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
核内受容体転写抑制補助因子SMRTは、ヒト、マウス等の哺乳動物の広範な臓器に局在し、甲状腺ホルモン等のリガンドによる代謝促進作用を抑制することが知られている。例えば肝臓において、SMRTは甲状腺ホルモン等の核内受容体を介して、脂質合成を抑制しており、脂肪細胞ではインスリンに対する感受性を高める作用を持つことが知られている。代表者はSMRTの全身欠失マウスを作成することに世界で初めて成功し、そのマウスに有意な肥満と骨格筋量の減少を生じることを突き止めたが、筋肉に存在するSMRTの機能的役割はまだ明らかになっていない。 また代表者は、マウス筋芽細胞由来のC2C12細胞からSMRTを欠失させた株を確立し、本細胞株は細胞内のβ酸化が亢進しかつ、また筋菅形成などの分化能を失うことを見出した。さらなる解析により、その分化能低下の原因として、SMRT欠失が細胞のTGF-β受容体経路を亢進させ、その結果、筋細胞の線維化が促進されることを突き止めた。 本研究では、全身SMRT欠失マウスの骨格筋を用いた網羅的なプロテオミクス解析を行い、SMRTの骨格筋における代謝制御機構の全貌をin vivoレベルで明らかにする他、上記の培養細胞によるin vitroの研究結果を踏まえて、研究を更にin vivoレベルに発展させる。TGF-β受容体経路活性化に伴う筋細胞の線維化をin vivoレベルで抑制することで、骨格筋の分化・再生能を回復させて筋肉量の減少を防ぐことを示し、ヒト退行性筋疾患の治療応用につなげたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SMRT欠失マウス筋芽細胞C2C12細胞を用いたさらなる解析により、TGF-β受容体経路の活性化による線維化は転写因子SMADを介した作用であり、受容体の阻害が、筋線維化を有意に抑制することがわかった。この結果はin vivoでの骨格筋線維化の治療研究にも応用できる。国際学会への発表(米国内分泌学会2020、コロナ化のためweb上にて抄録掲載)を終え、近く英文学術誌への投稿を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
全身SMRT欠失マウスの筋試料を用いた網羅的なプロテオミクス解析を行い、SMRTの骨格筋における代謝制御機構の全貌をin vivoレベルで明らかにする他、培養細胞によるin vitroの研究結果を踏まえて、TGF-β受容体経路の阻害による骨格筋量の改善や線維化の抑制などに着目した治療応用的な研究を進める。
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Causes of Carryover |
厚生労働省健康局健康課に1年間出向(人事交流制度)した。医系技官として勤務したため、研究遂行に遅れが生じたものの、マウス組織プロテオミクス解析など可能な限りのデータ蓄積は得られた。それらの結果に基づいて筋障害マウスモデルなどの次年度に向けた研究を立ち上げて、すでに開始しており、次年度を含めれば、成果の遅延を十分挽回できると考えている。
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