2021 Fiscal Year Research-status Report
うつ病態と関連する血中トリプトファン・キヌレニンの新規運搬因子の同定と役割解明
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21K07369
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瀬戸山 大樹 九州大学, 大学病院, 助教 (30550850)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | うつ病バイオマーカー / トリプトファン・キヌレニン / 遊離型 / 運搬タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで、質量分析装置を駆使し、うつ病と関連するバイオマーカーとして血中のトリプトファン・キヌレニン代謝物を報告した。本年度はまず、うつ病に関連するとされる「ひきこもり者」の血しょうメタボローム解析を行い、特徴的な代謝物マーカーをいくつか発見し、報告した。面白いことに、ひきこもり者ではトリプトファン・キヌレニン系のバイオマーカーは関連していなかった。うつ病に関連するこれらの代謝産物は、血中において何らかの超巨大分子(タンパク質)と結合して運搬されることが我々の研究からわかっていたので、本研究では、その運搬因子を同定し、うつ病との関連を明らかにするために、そのタンパク質の血中濃度定量法の確立し、評価した。実際、血中トリプトファンの運搬タンパク質の一つであるα2マクログロブリンの血中レベルは、健常者群に対してうつ病患者群において有意に低下していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はまず、血しょうのゲルろ過法によって、トリプトファン・キヌレニン代謝物が含まれる画分の質量分析によって、高分子側のトリプトファン画分の主要なタンパク質としてα2マクログロブリン(A2M)を同定した。一方、キヌレニン画分は、トリプトファンとは異なる分子帯に分画され、その主要なタンパク質としてハプトグロビンを同定した。実際、インビトロ系によるタンパク質と代謝物相互作用のパラメータ測定のため、ビアコア(表面プラスモン共鳴法SPR)の利用を試みたが、装置のトラブル等で解析できなかった。そこで計画を前倒しして、それぞれのタンパク質の血中レベルとうつ病との関連解析を行うため、ELISAキットを用いて解析した。未服薬のうつ病コホートサンプル(患者38名、健常者38名)を使ったELISA解析により、患者の血中A2Mレベルは有意に低下していることがわかった。しかし、反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS療法)の患者8名の治療前後のコホートサンプルへ適用したが、有意差は見られなかった。これに関しては、今後、検体数を増やして再検証を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に評価できなかったハプトグロビンのELISA解析を行い、血中キヌレニンとハプトグロビンレベルがうつ病とどのように関連しているのかを検証する。また、A2Mの血中レベルとトリプトファンの遊離型レベルがどのようなうつ病諸症状と関係があるのかを情報科学的に検証していく。更に、より大規模なコホート検体を行うための検体収集を、協力研究者である加藤隆弘精神科医師と進めていく。
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Causes of Carryover |
初年度計画していたインビトロ実験系の確立が未到達であったことや、コロナ禍において、研究活動の制限や物品の発注等に支障をきたしたため。
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Research Products
(3 results)