2022 Fiscal Year Research-status Report
脳内炎症抑制に着目した漢方薬のうつ予防戦略に向けた基礎研究
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21K07376
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
伊藤 直樹 北里大学, 薬学部, 講師 (00370164)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 香蘇散 / 脳内炎症 / うつ |
Outline of Annual Research Achievements |
老化や感染症に伴ううつや不安などの精神症状出現には、全身性炎症のみならず脳内炎症が深く関与することが近年明らかになってきた。昨年度まので検討で我々は、漢方薬である香蘇散が老化過程で受ける様々なストレスによって誘導されるうつ様行動に対して、その発症を抑制する可能性を老化促進SAMP8モデルマウスで示してきた。そこで本年度では、その薬効機序に脳内炎症や全身性炎症抑制がどの程度関わるかについて検討したと共に、擬似感染症モデルマウスで惹起されるうつ様行動に対して香蘇散の反復投与が有効性を発揮するかについての解析も開始した。 SAMP8モデルマウスを用いた検討で、一時的な炎症応答を誘導するために腹腔内投与したリポ多糖 (LPS, 0.33 mg/kg)群の脳内海馬領域で認められたICAM-1 (炎症惹起に関与する細胞接着分子) タンパク質発現の有意な増加は、香蘇散投与群で有意に減少した。さらに、香蘇散投与群では、抗炎症型microgliaマーカーのarginase1タンパク質発現が海馬で有意に増加した。また、血清中のケモカインレベル(MCP-1やCXCL1)の解析において、LPS投与により一時的に誘導された全身性炎症応答に対して、香蘇散投与群ではその回復を早める可能性が示された。これらの成果は、香蘇散は脳内炎症抑制の他に、全身性炎症に対しても抑制的に働く可能性を示していると考えられた。 擬似感染症モデルマウスを用いた検討では、LPSの漸増投与 (0.21, 0.42, 0.84 mg/kg) により認められたマウスのうつ様行動に対して、香蘇散の事前反復投与による有意な抑制が観察された。 この効果に脳内炎症や全身性炎症の抑制効果が関与するかについては現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、複数のモデルでの検討が進み、香蘇散の脳内炎症抑制メカニズムについて様々な因子が関与している可能性のデータが得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度採取した脳や血清サンプルを用いて、香蘇散の脳内炎症抑制に関わる因子の解析やそれらの関係性をさらに明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度の実験に係った費用は、他の予算から一部充てることができたため、残りの予算を次年度に繰り越した。 その予算は、次年度に脳内炎症解析で使用する試薬購入費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)