2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a risk tool for predicting chemo brain due to cancer treatment with new molecularly targeted therapy and chemotherapy in older patients
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21K07383
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
澤木 正孝 愛知県がんセンター(研究所), がん予防研究分野, 研究員 (20402597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平 成人 岡山大学, 大学病院, 准教授 (50467734)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | がん薬物療法 / 高齢者 / ケモブレイン |
Outline of Annual Research Achievements |
ケモブレインとは、がん薬物治療中もしくはその後に、記憶力や思考力、集中力など認知機能が低下する症状のことを指し、原因は明らかでなく、解明が進んでいない病態である。高齢のがん患者が増加するなか、治療前にその予測が可能となれば、個人の治療最適化につながり、治療を受け入れるか否かの意思決定支援策の一助となる。そこで本研究では、高齢がん患者に投与する抗がん薬および新規分子標的薬に起因するケモブレインについて、その特徴や分子機構を解明し、予測モデルを開発することを目的とした。 本研究の意義は、どのような患者及びがん治療薬にケモブレインが起因するのか、その影響を軽減するために何ができるかが明らかになれば、高齢がん患者の治療前における意思決定支援につなげられ、治療を行う場合でも認知機能に関する憂いが少なく治療を受けられるようになることである。 ケモブレインの原因は複数であり、抗がん薬だけではなく鎮痛剤などの支持療法や糖尿病、甲状腺、うつ病、不安感、栄養不足などの加齢による変化や併存症などが重なっている。今まで前向き研究が行われていなかったことから、併存症との関連が判断できていない。そこで本研究では、がん治療において手術による治癒切除を行った、全ての薬物療法、すなわち標準的な抗がん薬、内分泌治療薬、新規分子標的薬等を行う高齢者の患者を全て含めた観察研究とした。また個々の高齢者の背景となる身体機能、併存症、栄養状態、精神状態、社会背景等からなる高齢者機能評価 (Geriatric Assessment)を行うため、背景因子と治療因子を組み合わせた研究解析が可能となる点に独自性がある。 本研究では、ベースラインの認知機能検査値、治療中、治療後の値を経時的に検証し、治療群間の推移の比較を行うことにより、高齢者機能評価との関連をみながら、治療によるケモブレインの予測と対応を可能とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずケモブレインの実態を幅広く、かつ実地臨床に即した結果を導くため観察研究を行う。現在、「高齢者総合的機能評価スクリーニングツール開発のための、高齢乳がん患者を対象とした多施設共同前向き観察研究」を進行中であり、令和4年4月現在、約600例と症例登録は順調に進んでいる。本研究はこの観察研究の枠組みで認知機能検査を行う。現在まで登録を進め、本研究を完成させるための研究計画書を作成した。概要は下記である。 評価項目:無病生存期間、全生存期間、有害事象、治療コンプライアンス、意思決定における葛藤、アドバンス・ケア・プランニングの経験とニーズ、治療決定における影響因子、治療決定における患者選好、認知機能検査。認知機能検査については、先行研究を参考にするためMini-Mental State Examination (MMSE)を施行する。ベースライン、治療開始1年時、治療開始時3年時をスクリーニングのポイントとする。また特定の遺伝子多型存在者での認知機能低下のリスク増加が指摘されている。具体的にはケモブレインがアルツハイマー病に関連するアポリポタンパク質E (ApoE) 4遺伝子多型を有する女性のみで現れ、さらに特定の薬剤との関連性が示唆されている。そのため本研究では分子機構の解明の一助とするため、周術期における採血検体を用いたApoE遺伝子多型に関する研究計画について準備を整えた。 副次的な目的として、老年医学に関わる医療従事者との共同診療の普及を推進することを挙げた。本年度は老年医学の専門家と本研究計画についての共同会議を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、ケモブレインの原因は明らかでない上、その病態は複雑である。前向き研究が少ないため併存症との関連が判断できない面もある。乳がんの標準治療薬による認知機能低下は一過性とする報告もあるが、薬物療法を行わない症例や新規分子標的薬、最新の抗がん薬の認知機能に関する影響の報告はなく、さらに高齢者機能評価と組み合わせた研究結果はないところに本研究の独自性がある。症例集積後、解析を予定している。本研究と並行し、高齢のがん治療導入患者についてのデータベースを作成する。また分子機構の解明のため副次的な探索的研究としてApoE遺伝子多型に関する研究を進め、できる限り多くの症例で効率的に研究が可能となるよう準備を整えている。 今後、老年医学に関わる医療従事者との共同診療を推進していきたい。理由としては、MMSEはスクリーニング検査であり、それのみで認知症・軽度認知障害と診断することは困難であり(日本老年医学会による)、せん妄、鬱の除外、脳のCTやMRIで二次性の脳機能低下を除外する必要があるが、実際の日常臨床の場では、MMSEを含めたスクリーニングによる認知機能障害の把握と早期治療介入は十分に行われていないからである。このため本研究を契機に、多くの施設でがん診療と認知機能を含めた包括的な高齢者機能評価に留意し、必要に応じて老年内科との連携を行い患者に還元できる体制作りの一助にしたい。
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Causes of Carryover |
研究計画時における初年度に必要な物品は、臨床試験の登録の時期の都合により、2年目に購入することとなったため。
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Research Products
(13 results)