2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞老化と個体老化へのチミジンホスホリラーゼの影響
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21K07392
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中島 融一 宮崎大学, 医学部, 准教授 (80372796)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 健康寿命 / チミジンホスホリラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
チミジンホスホリラーゼノックアウト(TP KO)マウスと野生型マウスの生存曲線(平均寿命)の観察において、TP KOマウス群(n数=110匹)は野生型マウス群(n数=80匹)に比べ、僅かながらも有意に寿命の延長が認められた。さらに、60~80週齢にかけて、野生型マウス群よりもTP KOマウス群の生存曲線は、その下降頻度が緩やかであり、この時期の両群間の被毛状態や運動量、行動性の活発さにも差が認められた。 同週齢のTP KOマウスおよび野生型マウスから採材した背部皮膚、心臓、肝臓、脾臓、小腸および大腿部骨格筋の各組織のTP、老化マーカーであるp16 (Cdkn2a/Ink4a)およびp21(CIP1/WAF1)のmRNA発現をRT-PCR法により、蛋白質発現の差異をWestern blot法により検出した。老齢期の野生型マウスは肝臓や脾臓の組織においてTPと老化マーカーとの相関が確認された。一方、TP KOマウスのこれら臓器の老化マーカーは野生型マウスに比較し、有意に低い発現量であった。併せてSenescence-associated secretory phenotype(SASP)に含まれる因子群の検出を試みたところ、FGF2、IL-8、およびβ1インテグリン等の発現の差異が認められた。また、近年、抗老化作用の標的として注目されているチロシンキナーゼファミリーとTPとの関連性が示唆される結果を得た。 細胞レベルでの確認のため、マウスの正常な培養線維芽細胞を100~120回継代して得た継代老化細胞を用いてTPの発現量の変化を調べた。細胞老化に伴いTPは高発現しており、TP KOマウスから採材した初代皮膚線維芽細胞も用いて、上記のSASP因子やチロシンキナーゼファミリーとTPとの関連性について調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞老化および個体老化(平均寿命と健康寿命)とチミジンホスホリラーゼ(TP)との関連性について、細胞レベルおよび個体レベルでの解析が進み、TPの制御による老化の遅延、老化による慢性炎症(Inflammaging)の新たな知見が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
TP KOマウスの主要臓器組織のmRNAアレイのデータや老化細胞の実験結果に基づき、細胞老化に対するTPの作用に、抗老化作用の標的の1つとなっているチロシンキナーゼの活性化制御の可能性が見いだせた。今後は、TPとSASP因子との関連性やTPとチロシンキナーゼとの関連性について、そのシグナル伝達経路の解明等、分子生物学的な検討を加えていく。 老化細胞を用いた検討では、継代老化細胞のほかに、4-ヒドロキシタモキシフェン添加による老化誘導をした培養細胞を用いて、TPとの関連性を調べる。
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