2021 Fiscal Year Research-status Report
冠動脈疾患患者における高比重リポ蛋白のコレステロール取り込み能測定の臨床的意義
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21K07403
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
石井 潤一 藤田医科大学, 医学部, 教授 (70222940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 寛之 藤田医科大学, 医療科学部, 教授 (50319266)
西村 豪人 藤田医科大学, 医学部, 助教 (40837423)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | small dense低比重リポ蛋白 / 安定冠動脈疾患 / スタチン / 心血管イベント / 高比重リポ蛋白機能 / 酸化リポプロテイン(a) |
Outline of Annual Research Achievements |
高比重リポ蛋白(HDL)機能とともに、小型高密度(small dense)低比重リポ蛋白コレステロール(sdLDL-C)および酸化リポプロテイン(a)はスタチン治療後の残余リスクとして注目されている。本年度は、冠動脈疾患患者に対するピタバスタチンによる積極的脂質低下療法または通常脂質低下療法のランダム化比較試験(REAL-CAD)の保存検体と既存のデータベースを用いて、高用量もしくは低用量スタチン治療例におけるsdLDL-C濃度と心血管イベントとの関係を明らかにした。 ケース・コホート研究の手法により安定冠動脈疾1972例(高用量ピタバスタチン[4mg/日]治療群960例、低用量ピタバスタチン[1mg/日]治療群1012例)を抽出し、ベースライン(登録時)と6ヶ月後のsdLDL-C濃度を測定した。その結果、高用量スタチンは低用量スタチンに比べてsdLDL-C濃度を20%減少させた。低用量スタチン治療群ではベースラインsdLDL-C濃度は心血管イベントの独立した規定因子であった。しかし、高用量スタチン治療群では有意な関係を認めなかった。一方、高用量スタチンは低用量スタチンに対して、ベースラインsdLDL-C濃度の最上位4分位(>34.3 mg/dL)例では心血管イベントリスクを46%減少させた。一方、ベースラインsdLDL-C濃度の第一4分位(≦19.5mg/dL)例ではリスクは40%増加し、第二および第三4分位例では心血管イベントリスクに有意な変化を認めなかった。 これらの結果から、スタチン治療中の安定冠動脈疾患患者ではsdLDL-C濃度は心血管イベントの独立した危険因子であり、高用量スタチンの心血管イベントリへの治療効果はsdLDL-C濃度の最上位4分位例で高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は冠動脈疾患患者に対するピタバスタチンによる積極的脂質低下療法または通常脂質低下療法のランダム化比較試験(REAL-CAD)登録症例からケース・コホート研究の手法を用いて1972例(高用量ピタバスタチン[4mg/日]治療群960例、低用量ピタバスタチン[1mg/日]治療群1012例)を抽出した。全抽出症例のベースライン(登録時)および6ヶ月後の残存検体は2021年度に購入した超低温フリーザーに保存してある。 全抽出症例における小型高密度(small dense)低比重リポ蛋白コレステロール(sdLDL-C)濃度の測定は終了したので、本年度は高用量もしくは低用量スタチン治療例におけるsdLDL-C濃度と心血管イベントとの関係を検討し、英文論分(J Atheroscler Thromb 2022 in press)を作成した。 現在、HDL機能および酸化リポプロテイン(a)濃度の測定を行っている。2022年3月の時点で低用量ピタバスタチン治療群(1012例)におけるHDL機能と酸化リポプロテイン(a)濃度の測定は終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
超低温フリーザーに保存してある血清を用いて、高用量と低用量スタチン治療例におけるベースライン(登録時)と6ケ月後の低比重リ高比重リポ蛋白(HDL)機能および酸化リポプロテイン(a)濃度の測定を継続する。 今後は、HDL機能に関しては、スタチン治療中の安定冠動脈疾患患者におけるHDL機能の低下は心血管イベントの独立した危険因子であるかを検討する。さらに、HDL機能が低い症例では高用量スタチンの(低用量スタチンに対する)心血管イベントリスクへの治療効果が大きいかを検討する。酸化リポプロテイン(a)に関しては、スタチン治療中の安定冠動脈疾患患者における酸化リポプロテイン(a)濃度の高値は心血管イベントの独立した危険因子であるかを検討する。さらに、酸化リポプロテイン(a)濃度が高い症例では高用量スタチンの(低用量スタチンに対する)心血管イベントリスクへの治療効果が大きいかを検討する。
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Causes of Carryover |
超低温フリーザーの購入価格が予定より若干安かったため、9937円の次年度使用額が生じた。2022年度の助成金とともに、HDL機能、酸化リポプロテイン(a)の測定費や解析費用に充てる予定である。
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