2021 Fiscal Year Research-status Report
異常蛋白の伝播、排出経路の解明に基づいたアルツハイマー病治療薬の開発
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21K07423
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊藤 義彰 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90265786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 裕子 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 後期臨床研究医 (20815394)
三野 俊和 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (60597566)
武田 景敏 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90445015)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 認知症 / アミロイドβ / 多光子顕微鏡 / アストロサイト / glymphatic系 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、アミロイドβ(Aβ)の流体における特徴を明らかにした。Aβは37度で24時間インキュベーションするとオリゴマー(2-3量体)からフィブリルを形成することを透過電子顕微鏡にて確認した。流体の中でAβオリゴマーは拡散および対流にて移動することを認めたが、フィブリル形成してしまうと拡散は起きなくなり、対流のみで移動し移動速度は低下するようになった。 次に、頭窓を介して二光子顕微鏡を用いたライブイメージング法にて、生体マウスにおけるAβの移動を観測した。脳表に滴下したAβは穿通動脈、静脈の血管周囲腔に移動した。血管周囲のAβは全周性に分布せず、凝集と分離を繰り返しながら緩徐に深部に移動する様子が確認された。この時、動脈と静脈の分布に差はなく、大部分のAβの移動は脳表滴下から頭窓作成までの間に完成していた。 In vivoでの観測では、Aβオリゴマーは拡散および対流にて移動することを認め比較的早い移動が観測されたが、フィブリル形成してしまうと拡散は起きなくなり大きな凝集塊を形成し、移動の速度が低下することが示唆された。動脈周囲のAβの集積は臨床的には脳アミロイド血管症を形成することが知られており、これに相応したアミロイド凝集塊が形成されるのを観察した。さらに脳表深部150μmの実質を観察、毛細血管周囲にAβが集積し、時間とともに集積が増加することを観察した。これにより脳実質で産生されたAβが毛細血管周囲から穿通血管に伝えられ、穿通血管周囲腔を介して脳表に排出される代謝経路が一連のつながりとして実験的に明らかにされた。 以上のデータについては、脳循環代謝学会2021にて発表し、現在Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolismに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため研究発表が制限されたが、研究室での活動は概ね計画通りに行われた。
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Strategy for Future Research Activity |
アミロイドβ(Aβ)が脳表から穿通動脈を伝わって、脳深部に移行することが実際にイメージングにて確認されたが、同時に解決すべき点が出現してきた。 まず血管周囲腔の流体の方向と流速について、明らかにする必要がある。すなわち血管周囲腔が”glymphatic系”として機能しているのであれば、流体の計測が可能なはずである。今年度は、まず蛍光ラベルしたデキストランを滴下することで、血管周囲腔全体を描出する。これまで考えられていたVirchow-Robin腔以外に血管周囲をながれる流体が観測できるのか、さらに詳しい解析が必要である。これまでの研究では描出される血管周囲腔は穿通枝の中でもわずかであり、しかも全周性に描出されることはなかった。この点を、Aβとデキストランの分布の違い、デキストランの分子量による違いなどから明らかにする。 次に、麻酔の影響を考慮する。これまでの研究はイソフルラン吸入化に行われていたが、イソフルランは血管拡張性に働き脳圧を亢進するため血管周囲腔の描出が低下してしまう可能性がある。麻酔をαクロラロース、ウレタンにより血管拡張をきたしにくいもので比較する必要がある。さらに脳表投与を脳深部投与法と比較する必要がある。脳深部に穿刺針を刺入しAβまたはデキストランを注入することで、血管周囲腔を介した排出が観測できるかを確認する。これまでの研究ではアイソトープラベルしたものの報告はあったが、可視化した報告はまだない。 また、Aβとならんでアルツハイマー病で蓄積しニューロン障害性に作用するタウ蛋白についてのイメージングも準備中である。rTg4100マウスを購入し、タウの描出、アイソトープラベルしたタウの脳表投与など、プレリミナリーな実験は済んでおり、今後の研究を急いで行う。
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Causes of Carryover |
次年度の物品費、旅費等に使用するため。
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