2022 Fiscal Year Research-status Report
標的ガングリオシドを遮蔽する糖脂質:ギラン・バレー症候群の発症と臨床像の規定因子
Project/Area Number |
21K07437
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
古賀 道明 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (60383014)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ギラン・バレー症候群 / ガングリオシド / 自己抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ギラン・バレー症候群(GBS)では、ガングリオシドが自己抗体の標的分子として同定され、本抗体が発症に関与すると想定されている。しかし、抗体と臨床像との関連は必ずしも一致せず、同じ抗体が陽性であっても臨床像は多彩である。例えば、GT1aはGBSにおける球麻痺の標的分子と想定されている。しかし、GBSの臨床亜型であるフィッシャー症候群(FS)ではほとんどの症例でGT1a抗体が検出されるのに対し、球麻痺をきたすことは稀である。したがって下位脳神経にGT1aを遮蔽する糖脂質の存在が予想され、その候補糖脂質の探索を昨年度に行った。プローブとして、球麻痺を主徴とするGT1a抗体陽性GBS 3例の血清を用いた。GT1aに様々な糖脂質29種をそれぞれ混合してGT1a/糖脂質複合体を作成し、このGT1a/糖脂質複合体に対するIgG抗体を測定することで、GT1a単独抗体と比べて活性の低下する糖脂質を検索した。その結果、一つの糖脂質(糖脂質X)がGT1a抗体活性を大幅に低下させた。 今年度は、「下位脳神経で糖脂質XがGT1aを遮蔽していることでFSでは球麻痺をきたしにくい」という作業仮説を検証した。FS 10例で、GT1a単独抗体とGT1a/糖脂質X複合体抗体との測定し、それぞれの抗体力価の差をみることで、糖脂質XによるGT1a抗体遮蔽率を評価した。その結果、FSにおいても糖脂質Xを添加することによってGT1a抗体活性が低下することが確認されたが、その程度は球麻痺の有無で差がなかった(平均遮蔽率:球麻痺があるFS 74% vs 球麻痺のないFS 67%:P=0.52)。つまり、糖脂質XがGT1aを遮蔽することは確認できたが、球麻痺の発現の有無には関与しないことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一次スクリーニングでピックアップされた、GT1aを遮蔽する糖脂質の候補に関して、その意義を検証できたことから。
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Strategy for Future Research Activity |
R3-4年度までとは逆の発想で、GT1aの抗原性を増強する糖脂質をスクリーニングすることで、GBSで球麻痺の発現に関与する分子の同定を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)効率的に実験を行うことで、プラスチック製品など消耗品が予想よりも少なくて済んだことから。 (次年度の研究費の使用計画)多くの検体を対象にする実験のため、当初の予定通りプラスチック製品や試薬などの多くの消耗品を要し、その購入に多くの研究費を費やす予定である。
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Research Products
(15 results)