2022 Fiscal Year Research-status Report
MOG抗体関連疾患の臨床表現型と重症化に関する分子免疫病理学的解析
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21K07453
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高井 良樹 東北大学, 大学病院, 助教 (40725743)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 炎症性脱髄疾患 / 視神経脊髄炎 / MOGAD / AQP4 / 補体 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
MOGAD (Myelin oligodendrocyte glycoprotein antibody-associated disease:MOG抗体関連疾患)は、 鞘最外層に発現するMOGの立体構造を認識するMOG抗体がCBA法により検出可能となったことで近年確立された疾患体系である。診断基準が提唱されたことで、その臨床表現型の概要は把握できるようになったが、その差異を生む詳細な免疫病態については未解明である。本研究課題は、中枢神経組織を含む臨床検体を用い、MOG抗体関連疾患の重症度や表現型に影響する因子を明らかにすることを目的としている。 申請者らは、本研究課題提出時点で、11例のMOG抗体陽性症例から得られた脳生検組織を用いて、脱髄病変の特徴が急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の脱髄パターンである血管周性脱髄病変(Perivenous demyelination) であり、多発性硬化症(MS)とは異なること、MOG蛋白が他の髄鞘構成蛋白に比してより障害が大きいことを見出し、補体活性能が、類似の臨床表現型を持つ抗AQP4抗体陽性視視神経脊髄炎(AQP4+NMOSD)症例に比して乏しいことを報告した。 2022年度は、MOGADの病理学的特徴について神経治療学会のシンポジウムにおいて報告し、主に臨床医との議論を通じて現状の問題点を抽出した。また、神経免疫学会では、AQP4+NMOSDとMOGADの病理学的差異を報告し、本質的な病態の違いについて議論を深めた。更に、明らかな自己抗体が検出されない、腫瘍様炎症性脱髄疾患において、MOGAD・MS・NMOSD・ADEMなどに類似する脱髄パターンの有無を検索し、その頻度と病理学的特徴についてまとめ、神経免疫学会においてポスター発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、既に検討が終了したMOGAD症例11検体の臨床情報を収集し、加えて追加で入手されたMOGAD症例および、原因不明の炎症性脱髄疾患における脳組織検体の病理学的解析および分類を行い、神経治療学会および神経免疫学会において報告した。また、学会報告を通じて、さらに多くの検体集積が可能となり、解析対象数が増加している。 以上の状況から、本研究の進捗 況はおおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
追加で入手された検体において、一部神経病理学的検討が終了していないものがあり追加検討を行う。また、臨床情報の入手が不十分である症例が存在するため、協力施設への呼びかけを行うことで、その完成度を高める。加えて、我々と同時に類似の報告を行った研究施設へ訪問することで、研究機関毎の差異をその研究担当者と直接議論し、原因をつきとめ、解析手法の標準化を行うと共に、より正確かつ適切な解析方法検討する。特に、補体沈着については、その賦活方法、評価方法を含めて明らかにする。また、本研究の主要課題である、炎症性サイトカイン(IL-1β IL-6)、およびTh17関連の炎症病態については、引き続き神経病理学的特徴と臨床表現型および重症度の相関関係について解析を続け、その結論を導く。
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Causes of Carryover |
OCVID-19の影響により、予定よりも学会報告等が制限され、旅費等への支出が少なかった。2023年度は回復見込みであり、成果報告を含め合計の予算額としては当初の見込み通りになる予定である。
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