2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the pathogenic mechanism and treatment strategy for autoimmune GFAP astrocytopathy
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21K07457
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
木村 暁夫 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00362161)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抗神経抗体 / GFAP / 自己免疫性脳炎 / 髄膜脳炎 / 髄膜脳脊髄炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で,国内における延べ201名の自己免疫性GFAPアストロサイトパチー患者を同定し,この中の138名の臨床像を明らかにした.年齢の中央値は53歳で,男性が67%であった.12%の患者で腫瘍を合併し,発症から入院までの日数の中央値は12日で,主な臨床所見は,意識障害69%,排尿障害65%,発熱62%,髄膜刺激徴候56%,腱反射亢進52%であった.その他,振戦41%,体幹失調35%,四肢運動失調34%,ミオクローヌス33%,視神経乳頭浮腫25%,呼吸障害20%に認めた.脳脊髄液検査では,単核球主体の細胞増多を99%,蛋白量の上昇を98%に認めた.オリゴクローナルバンドの陽性率は69%であった.頭部単純MRIでは,82%でT2/FLAIR高信号病変を大脳白質・基底核・視床・脳幹などに認めた.頭部造影MRIでは,69%で造影効果をみとめ,側脳室周囲放射状造影病変を50%で認めた.脊髄単純MRIでは35%に髄内高信号病変をみとめ,この中の88%は3椎体以上の連続する病変であった.治療は,96%の患者で免疫療法が施行され,内容はステロイドパルス療法92%,IVIg24%,血液浄化療法8%で,2名にリツキシマブ,2名にシクロホスファミドが使用された.維持療法としてプレドニゾロンの内服83%,アザチオプリン5%,タクロリムス1%で使用された.また13%の患者では人工呼吸器管理を必要とした.予後に関しては,modified Rankin Scale(mRS)の中央値が入院時4以上であった患者が75%を占めたが,最終観察時(観察期間中央値5ヵ月)2以下の患者が69%であった.入院期間の中央値は53日で,再発を12%で認めた.観察期間6ヵ月以上の患者63名を対象とした検討では,mRS3以上の患者が20%を占め,最終観察時に59%の患者で排尿障害や認知機能障害などの異常所見を認めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに,我々が確立したGFAP抗体の測定系を用い,全国の医療機関から依頼のあった1003名の脳脊髄液検体を用い抗体を測定した結果,201名の患者を同定した.また国内外の学術誌や学会において症例報告や症例集積研究の結果を報告した.その結果,臨床現場において本疾患が,広く周知されるようになった.また本疾患を疑う臨床的な特徴を明らかにした結果,新たな患者の発見とその後の治療および予後の改善につながった.一方,本疾患に関する新たな知見(難治例の存在など)と今後の問題点(ステロイド抵抗性の患者の治療など)も明らかとなった.病態解明に関しては,これまでの病理学的検討などから抗原特異的細胞傷害性T細胞の関与が示唆されている.また我々は患者の脳脊髄液中においてTNFαやIL6などの炎症性サイトカインが上昇し,それらの値とneurofilament light chainやGFAPなどの細胞障害マーカーと相関することや(Kimura A, et al. J Neuroimmunol. 2019),聖マリアンナ医科大学脳神経内科との共同研究において,患者脳脊髄液中においてCXCL10, CXCL13, CCL22といったケモカインが上昇していることを明らかにし報告した(Kikuchi T, et al. Clin. Exp. Neuroimmunol. 2023).また,乳癌合併患者の腫瘍組織においてGFAPの発現と,腫瘍内にT細胞の浸潤を確認し報告した(Yaguchi T, et al. BMC Neurol. 2023).このような症例では,腫瘍内に異所性に発現したGFAP抗原が自己免疫病態の契機となり,抗原特異的T細胞と抗体産生細胞が中枢に移行し本疾患を発症する可能性が推測された.今後,女性患者では時に卵巣奇形種や乳癌の合併を念頭に置き,腫瘍検索をする必要があると考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の推進方策として,以下の3つの問題点に取り組む.1) 病態解明を目的として,患者の血液中において,従来より本疾患で重要な役割を担うとされているGFAP抗原特異的T細胞が存在するのかを明らかにする.具体的には急性期の患者末梢血より単核球を分離し,分離した単核球にサイトカインを添加することにより樹状細胞とT細胞へ分化させ,これらの細胞に対しGFAP抗原で刺激することによりCD4,CD8陽性T細胞が活性化するかを確認する.また,患者に共通する遺伝的素因が存在するのかを明らかにすることを目的として,HLAクラスI(A, B, C)抗原とクラスII(DP, DQ, DR)抗原の遺伝子型を解析する.2) 予後関連因子を明らかにすることを目的として,自己免疫性GFAPアストロサイトパチー患者の臨床データおよび血液・脳脊髄液検査所見,画像所見と予後との関連性を明らかにする.脳脊髄液検査所見に関しては,これまでの研究において患者で上昇することを確認しているサイトカイン(IL6, TNFα)とケモカイン(CXCL10, CXCL13)と予後との関連性に関しても検討する.またこれまでの研究で明らかになった予後不良難治例の実態を明らかにし,これら患者に対する今後の治療法の確立を目指す.3) GFAP抗体陰性のアスロトサイト抗体陽性例の特徴を明らかにする.我々は,今回の研究の中で,免疫組織学的にアスロトサイトに対する自己抗体が存在することが確認された症例の中に,cell based assayではGFAPαに対する反応性がみられない症例が存在することを見出した(未発表データ).これら自己抗体はGFAP以外のアストロサイトに発現する抗原を認識する自己抗体である可能性があり,今後抗原蛋白の同定と抗体陽性患者の臨床的特徴を明らかにする.
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