2022 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経損傷部位において神経回路再編に許容的な場を形成する細胞群の役割解明
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21K07459
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
糸数 隆秀 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任教授(常勤) (60750015)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中枢神経損傷 / 脊髄損傷 / 神経可塑性 / グリア細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄損傷後の神経回路の修復を促進するような新規治療法の創出のため、脊髄内環境の構築に寄与する新規細胞群および分子メカニズムの同定を目指した研究を行った。 まず、脊髄中心管をとりまく上衣細胞に着目した検討に注力し、マウス脊髄圧挫損傷モデルを用いて、脊髄損傷後の上衣細胞の挙動を詳細に解析した。脊髄損傷をきっかけとして上衣細胞は増殖・分化する。この現象を加速することが神経組織の修復を促進するのではないかとの仮説のもと、その分子メカニズム解明を行い、上衣細胞におけるIL-17シグナルが上衣細胞の増殖を負に制御しており、本シグナルを抑制することで炎症病態下での上衣細胞の増殖抑制が解除され、運動機能障害が改善することが示された。 次いで、同じく脊髄損傷モデルを用いて、脊髄障害後に脊髄後角の神経根(末梢神経)から中枢神経内に侵入してくるシュワン細胞由来細胞(修復シュワン細胞)に着目した研究を行った。上述の上衣細胞と同様、増殖・遊走した修復シュワン細胞が脊髄損傷後の中枢神経環境を改善し、軸索の保護・再生に有益に働くとの仮説の下、その挙動を詳細に解析し、修復シュワン細胞がCXCR4を発現しており、脊髄損傷後にそのリガンドであるCXCL12の発現が脊髄内で上昇していることを明らかにし、本シグナルが修復シュワン細胞の遊走を促進しており、薬剤により本シグナルを賦活化することで修復シュワン細胞の遊走が加速され、運動機能障害が改善することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り検証を進め、着目していた2つの細胞種(上衣細胞、修復シュワン細胞)について、何れにおいてもその増殖・遊走に関与する分子メカニズムを明らかにし、着目分子への介入によって神経機能予後が改善することを示しており、想定をやや上回るペースで結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、脊髄障害後の神経機能回復に寄与する新規メカニズムの探索を進める。外傷性脊髄損傷モデルに加え、炎症性脊髄損傷モデルにおいても検証を行い、障害の種類による分子メカニズムの違い等、より重層的な解析を行うことで、本研究課題のコンセプトの普遍性を検証する。
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Causes of Carryover |
2023年上半期に、使用額の大きいスクリーニング実験および動物実験を計画しており、2022年度はこれらの実験に使用するサンプル調整や予備検討を行ったため。
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