2022 Fiscal Year Research-status Report
聴覚変化応答と脳内抑制系を標的とした双極性障害の神経認知の探索
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21K07480
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
元村 英史 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (10324534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 幸二 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 障害システム研究部, 部長 (70262996)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 双極性障害 / 脳磁図 / 変化関連脳活動 / 神経振動 / 時間周波数解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、音特性変化に基づく自動脳応答を標的として双極性障害の神経認知の解明を目指しています。コロナ禍のため、今年度も主に新たな実験系の確立を目指し、以下のことを明らかにしました。 1) γ帯域、特に40 Hzの神経振動は知覚情報処理を含め、幅広く認知に関わることが知られています。健常者を対象とし、40 Hz神経振動に対する突然の音圧変化の影響について脳磁図を用いて検討しました。40 Hzの周期的音刺激を呈示すると、聴覚野における40 Hz神経振動が明瞭に観察されますが、突然の音圧変化によって、この40 Hz神経振動は一過性に減弱して、その後に回復します。40Hz神経振動は変化応答にも重要な役割を果たすのではないかと考えます。更に症例数を増やして検証し、脳波計を用いた患者群での測定を進めたいと思います。 2) 連続音の音特性を変化させると、変化関連脳活動が誘発されますが、その振幅は音特性変化の物理的変化量に影響を受け、変化前の先行音の刺激呈示が長いほど活動強度は強くなります。つまり、なんらかの感覚記憶の関連が考えられます。先行音の呈示時間および音圧増加量と変化関連脳磁場活動振幅の関連をlinear regression lineのslopeを用いて検討しました。これらのslopeはそれぞれ感覚記憶や音圧変化への鋭敏性を示唆する指標と考えますが、健常者においては各slopeともに変化関連脳磁場活動振幅と強い正の相関を示しました。これらの指標を用いることで、双極性障害における感覚記憶や変化検出感度の異常を見出せるかもしれません。R4年度後半からこの二つの指標とプレパルス抑制を同時に測定・評価する変化関連脳活動の実験系を用いて、健常者群と患者群での脳波測定を始めました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍が続き、被験者のリクルートが難しく、測定数が計画当初の予定より下回りました。しかし、新たに時間周波数解析による基礎的研究を行うことによって、実験系の更なる改良ができ、研究全体としては概ね予定通りに進んでいます。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は引き続いて脳磁図データを用いた基礎的研究を進めるとともに、脳波計による患者群での計測を進めていきます。また、R4年度に行った基礎的研究の成果について学会および論文発表を行う予定です。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、学会出張費および被験者謝金が当初の見込みよりも少ない支出となりました。予定していた基礎的研究成果もR4年度中に論文発表できませんでした。繰り越した研究費は国際誌への投稿費に充てる予定です。
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