2021 Fiscal Year Research-status Report
Biological assessments for severity of and therapeutic response to depressive mixed state
Project/Area Number |
21K07504
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
近藤 毅 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40215455)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
座間味 優 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60896570)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 抑うつ性混合状態 / 自閉スペクトラム症 / 大うつ病性エピソード / 重症度評価 / 破壊的な感情/行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、これまでの研究において、抑うつ性混合状態の定量的な重症度評価を可能とする評価票であるself-administered 12-item questionnaire for DMX(DMX-12)を開発し、若年、双極性、重症うつ病の3因子が抑うつ性混合状態の危険因子として重要であることを指摘してきた(Shinzato et al, Neuropsychiatr Dis Treat, 2019)。 2021年度は、臨床的な印象として語られることの多い「自閉スペクトラム症を併存するうつ病では抑うつ性混合状態をきたしやすい」との仮説を検証するため、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder: ASD)における抑うつ性混合状態の頻度や病像の解析を試み、抑うつ性混合状態と自閉スペクトラム症との関連について、大うつ病性エピソードを有する182名(ASD 36名,非ASD 146名)を対象として検討を行った。 その結果、ASD患者は非ASD患者よりも抑うつ性混合状態の頻度が有意に高かった(36.1% vs. 18.5%)。DMX-12で評価された抑うつ性混合状態の症状群において、ASD患者は非ASD患者よりも、気分の易変性,注意散漫,衝動性,攻撃性,易怒性,不快気分,危険行為の症状の頻度が有意に高く、DMX-12の総得点およびその下位項目である破壊的感情/行動クラスターでも有意に高得点を示した。 以上の所見より、ASDが定量的および定性的な両面において、抑うつ性混合状態を呈しやすいことが明らかとなり、ASD患者のうつ病治療においては、これらの諸事実を念頭に置いたより慎重な対応を行う必要性が示唆された(Zamami et al.,2021 Psychiatry Res)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らが開発した抑うつ性混合状態に関する定量評価スケールを用いて、抑うつ混合状態の危険因子である若年、双極性、重症うつの3因子に続いて、自閉スペクトラム症の併存が第4の危険因子であることを明瞭に示すことができた。 これまで臨床的印象に過ぎなかった「自閉スペクトラム症のうつ病では抑うつ性混合状態を呈しやすい」という仮説を、本年度は客観的に実証することを可能とした点で、臨床面での意義や貢献は大きく、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、神経免疫や神経生理などの生物学的指標との関連を検討することで、抑うつ性混合状態の病態の生物学的基盤を明らかにすることも重要な目的としており、現在、蓄積されつつあるデータを基に予備的解析の準備を進めている過程にある。 特に、2022年度においては、抑うつ性混合状態と神経免疫学的指標との関連を解明することを主眼としたい。すなわち、抑うつ性混合状態の病態や重症度を、神経炎症の攻撃的因子や神経栄養因子などの保護的因子の両者の観点から捉えることで、その生物学的機序の一端を解明し、それらに基づく治療戦略策定の可能性を検討していく予定である。
|
Causes of Carryover |
2021年度は、新たな研究計画や研究分担者が加わり研究体制が一新されたために、サンプル蓄積のためのプロセスに関して情報の周知や共有を行うための準備期間を要したことに加え、コロナ禍において新規外来患者の全般的な抑制傾向があり、年間目標の症例対象である50人を下回った。生物学的指標の定量においては、可能な限り一定条件下での測定が比較検討のためには望ましいため、今年度のサンプルは次年度において一括した定量を行うべく、生物学的指標の測定に関する予算使用を、次年度にまとめて行うべく計画を立て直した。
|
Research Products
(3 results)