2022 Fiscal Year Research-status Report
Biological assessments for severity of and therapeutic response to depressive mixed state
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21K07504
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
近藤 毅 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40215455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
座間味 優 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60896570)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抑うつ性混合状態 / 神経免疫学的指標 / 神経栄養因子 / 神経炎症因子 / BDNF / IL-6 / TNF-α / hsCRP |
Outline of Annual Research Achievements |
抑うつ性混合状態(depressive mixed state: DMX)の生物学的機序を解明するため、DMXと神経免疫学的指標(BDNFなどの神経栄養因子およびIL-6,TNF-α,hsCRPなどの神経炎症因子)との関連を検討した。 136名の大うつ病性エピソードを有する患者を対象とし、抑うつ症状をQuick Inventory of Depressive Symptomatology(QIDS-SR-J)、DMXをself-administered 12-item questionnaire of depressive mixed state(DMX-12)にて評価し、我々の過去の報告(Shinzato et al, Brain Sci 2020)でのDMX-12の中の8つの特異症状によるカットオフ値(DMX-8≧13でDMX陽性)を参考とし、DMX陽性54名およびDMX陰性82名の2群に分類した。 その結果、DMX陽性群の血清BDNF値はDMX陰性群よりも有意に高く(P=0.009)、DMX-8のスコアとBDNF値の間には有意な正の相関が認められた(r=0.19, P=0.027)。ロジスティック回帰分析においても、BDNF (OR=1.07, 95%CI:1.00-1.14, P=0.045)は双極性障害 (OR:3.43; 95%CI:1.36-8.66; P=0.009)やQIDS-SR-J 総スコア (OR:1.29; 95%CI:1.15-1.43; P<0.001) とともに、DMXの重症度への有意な関与を認めた。 DMX重症度とBDNF値の正相関の結果は、双極性障害のうつ病相や躁病相でBDNFが低下するとの従来の報告とは対照的であった。このため、重症のうつ症状に対してBDNF上昇による代償が生じ、再生過程としてDMXが現れる可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の研究ではうつ病相や躁病相を対象として神経免疫学的指標との関連を報告したものが多く、総じて神経栄養因子(BDNF)の低下や神経炎症因子(IL-6,TNF-α,hsCRP)の増加が示されてきた。 本年度の研究は、抑うつ性混合状態における神経免疫学的指標をはじめて検討したものであり、特に神経栄養因子に関しては、抑うつ性混合状態がうつ病相や躁病相とは異なる挙動(BDNF値の増加)を示す結果を得ており、抑うつ性混合状態の機序および意義を再考する上で大変興味深い。 したがって、抑うつ性混合状態の生物学的機序に迫るユニークな結果が得られた点で、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
抑うつ性混合状態と神経免疫学的指標(神経栄養因子および神経炎症因子)との関連に関する論文は現在投稿中であり、結果の英文誌への公表および情報共有を目指したい。 2023年度は、抑うつ性混合状態のもう一つの重要な臨床的側面である危険行動リスク(自傷および自殺企図)にも焦点を当て、抑うつ性混合状態における自殺リスクの検証と関連する危険因子の解明に向けて研究を展開したい。
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Causes of Carryover |
2022年度に蓄積されたサンプルの残余があり、若干の次年度に回す使用額が生じた。生物学的指標の定量においては、可能な限り一定条件下での一括測定が比較検討のためには望ましいため、今年度のサンプルは次年度において一括した定量を行うべく、生物学的指標の測定に関する予算使用を、次年度にまとめて行うべく計画している。
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Research Products
(8 results)