2023 Fiscal Year Research-status Report
新規蛋白質NT5DC2のカテコールアミン合成における機能の解明:精神疾患との関連
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21K07530
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
中島 昭 藤田医科大学, 医学部, 教授 (20180276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 央輝 四日市看護医療大学, 看護医療学部, 准教授 (70319250)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | NT5DC2 / チロシン水酸化酵素 / パーキンソン病 / 神経変性疾患 / カテコールアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は機能不明の細胞内タンパク質NT5DC2がチロシン水酸化酵素と結合することを発見した。チロシン水酸化酵素はカテコールアミン合成系の律速酵素であり、その分子内のリン酸化によって活性が制御されている。一方、NT5DC2はアミノ酸配列情報からはフォスファターゼに分類されることが推定される。そこでカテコールアミン合成経路におけるNT5DC2の役割を明確にするため、NT5DC2がフォスファターゼとして機能するかどうかに着目して解析を進めた。 1)NT5DC2がチロシン水酸化酵素のリン酸化に及ぼす影響:①Flag-tagを組み込んだNT5DC2発現ベクターを作製してPC12D細胞内で過剰発現させた後、細胞内で発現しているチロシン水酸化酵素のリン酸化の変化をウェスタンブロット法で解析した。②遺伝子工学的に人工合成・精製したヒトチロシン水酸化酵素に、キナーゼを添加してリン酸化を誘導した。このリン酸化チロシン水酸化酵素に対するNT5DC2による脱リン酸化作用を解析した。 2)NT5DC2の機能解析:Flag-tagを組み込んだNT5DC2発現ベクターをPC12D細胞内で過剰発現させた後、磁気ビーズを用いてNT5DC2を均一なタンパク質として精製した。フォスファターゼの合成低分子基質を用いて、この精製NT5DC2の酵素活性を解析した。 3)NT5DC2へ結合するタンパク質の網羅的解析:NT5DC2-Flag-tag発現ベクターをPC12D細胞内で過剰発現させ、NT5DC2-Flag-tagに結合する細胞内タンパク質をLC-MS/MSを用いてプロテオーム解析した。 以上の実験から、NT5DC2はチロシン水酸化酵素のリン酸化を低下させるフォスファターゼ様の働きを有することを明らかにした。NT5DC2はチロシン水酸化酵素に加えて、40種類程度の細胞内タンパク質と結合する可能性があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「研究実績の概要」欄にある1)NT5DC2がチロシン水酸化酵素のリン酸化に及ぼす影響、2)NT5DC2の機能解析、3)NT5DC2へ結合するタンパク質の網羅的解析、については概ね順調に結論を得ることができた。 一方、3)NT5DC2へ結合するタンパク質の網羅的解析の結果から得られた「NT5DC2が結合できるチロシン水酸化酵素以外の細胞内タンパク質(候補)」については、「これら細胞内タンパク質に対するNT5DC2の役割」を解析する十分な実験を遂行することができなかった。教育に関する予定外の仕事が発生し、実験の進捗が遅れたことが原因している。
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Strategy for Future Research Activity |
NT5DC2の機能解析が本来の目標である。NT5DC2はチロシン水酸化酵素のリン酸化を低下させるフォスファターゼ様の働きを有するタンパク質であり、その結果としてカテコールアミン合成の調節に関与していることを明らかにした。一方、NT5DC2はチロシン水酸化酵素以外にも40種類程度の細胞内タンパク質と結合できる可能性が確認されたため、この中でカテコールアミン合成に関連性があるタンパク質に着目して以下のような実験を進める予定である。 1)NT5DC2と細胞内タンパク質との相互作用: LC-MS/MSによるプロテオーム解析でNT5DC2との結合が予想されたタンパク質から候補を選び、カテコールアミン合成に与える影響を解析する。 2)NT5DC2の細胞内局在の解析: タンパク質の機能を明確にするためには細胞内局在の解析が重要となる。プロテオーム解析を用いて得られたNT5DC2と相互作用するタンパク質の情報に、細胞内局在の情報を加味してNT5DC2の機能を推定する。細胞内局在は抗体を用いた免疫染色だけでなく、NT5DC2を発現するGFP融合ベクターの使用も有効であると考えている。
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Causes of Carryover |
教育に関する予定外の仕事が発生したこと および体調不良のため、実験の進捗が遅れたことが原因している。 「9.次年度使用が生じた理由と使用計画」欄に記載した使用計画に基づいて研究を実施する。
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