2022 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫機序による認知症、精神疾患での抗体診断法確立と治療アルゴリズムの作成
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21K07541
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田中 惠子 新潟大学, 脳研究所, 非常勤講師 (30217020)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自己免疫性脳炎 / 神経シナプス関連自己抗体 / セルベースアッセイ / 網羅的抗体検出系 / 治療アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性脳炎の患者は、一般に亜急性発症の精神症状、記銘障害、けいれん、意識障害などを呈する。近年、自己免疫性脳炎の診断マーカーとなる自己抗体が多数見いだされ、それぞれの臨床的特徴と抗体種との関連が徐々に明らかになっている。 しかしながら、新たな抗体の発見が相次ぐ状況にあり、報告された多数の抗体を、疑わしい症例すべてについて検査することは困難であり、自己免疫性脳炎の全体像を把握できていない。申請者は、報告数の多い抗体を可能な限り検出するシステムの構築を進めており、中枢神経の興奮性・抑制性シナプス受容体を標的とするN-methyl-D-aspartate receptor :NMDAR、α-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic receptor:AMPAR, γ-aminobutyric acid type B/A receptor:GABAB/AR, leucine-rich glioma inactivated 1:LGI1, contactine-associated protein-like 2:CASPR2, glycine receptor:GlyR, DPPX, GluK2, GluDに加え、MOG, APQ4 に対する自己抗体を安定的に検出するcell-based assay法を確立しており、各施設からの診断依頼に対応している。 これまでの集計では、最も検出数が多いのは従来通りNMDAR抗体陽性例であるが、近年、脳炎としての特徴的な症候を呈さずに慢性経過の認知症で推移する例の認知度が高まっており、今回の検討でも、認知症の診断の下に加療されていた症例が複数例見られた。 特に、近年、急性脳炎を疑う症候が乏しい精神病、認知症、てんかんの中に、脳炎関連自己抗体が検出され、免疫療法が奏功する例の認知度が高まっており、抗体検査に至る例も増えている。今後はさらに多数例を集積して、自己免疫性脳炎病態の広がりを明らかにする予定で引き続き症例の集積に務めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度に脳炎関連自己抗体の網羅的検査を実施した検体数は240件であり、そのうち申請者が行っている検査で、何らかの自己抗体が陽性であったのは39例で、検出率は、NMDAR (4.6%) >LGI1 (3.8%)>MOG (3.3%)>GlyR (1.7%)>AMPAR , GABABR, CASPR2は0.8%であった。非定型的な症候を呈する症例が増えており、慢性の認知機能障害のみを呈し、抗LGI1抗体陽性であった例が6件見られ、当初、認知症として加療されていた例であった。検出系についても、少量の検体で一度に多数の検査を行う工夫を重ねており、複数の検体を同時に解析するバッチ法でのスクリーニングを導入することで、その後の確定診断に至る工程を短縮することができた。抗体陽性例についてのデータベース作成も進めており、診断・治療のアルゴリズム作成にむけて、集計の準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
学会・著作などでの啓蒙を行い、これまで免疫性疾患の可能性が考慮されなかった非典型例を含めて対象例を増やしていく。自己抗体陽性者の多くは、速やかな免疫療法導入により、神経症状が改善することから、本研究で集積した多数例について、各抗体陽性例の臨床的特徴をまとめ、臨床的特徴から診断を推定し、速やかに免疫療法を加えるためのアルゴリズムを作成する。この結果を公表して、認知症・精神疾患・てんかんなどの非典型例について、治療可能な症例の早期発見につなげるための啓蒙活動を行う。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] The validity of atypical psychosis diagnostic criteria to detect anti-NMDA receptor encephalitis with psychiatric symptoms2022
Author(s)
Kenji Hinotsu, Chikara Miyaji, Yuji Yada, Hiroki Kawai, Shinji Sakamoto, Yuko Okahisa, Ko Tsutsui, Takashi Kanbayashi, Keiko Tanaka, Soshi Takao, Yoshiki Kishi, Manabu Takaki, Norihito Yamada
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Journal Title
Schizophrenia research
Volume: 248
Pages: 292-299
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Cervical lymph nodes and ovarian teratomas as germinal centres in NMDA receptor-antibody encephalitis2022
Author(s)
A.Al-Diwani, J.Theorell, V.Damato, J.Bull, N. McGlashan, E. Green, AK Kienzler, R. Harrison, T. Hassanali, L. Campo, M. Browne, A. Easton, HS majd, K. Tenaka, R. Iorio, RC Dale, P Harrison, J Geddes, D Quested, D Sharp, ST Lee, DW Nauen, M Makuch, B Lennox, D Fowler, F Sheerin, P Waters, MI Leite, AE Handel, SR Irani
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Journal Title
Brain
Volume: 145(8)
Pages: 2742-2754
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Impairment of early neuronal maturation in anti-NMDA-receptor encephalitis.2022
Author(s)
Sojiro Okamoto, Manabu Takaki, Kenji Hinotsu, Hiroki Kawai, Shinji Sakamoto, Yuko Okahisa, Soshi Takao, Ko Tsutsui, Takashi Kanbayashi, Keiko Tanaka, Norihito Yamada
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Journal Title
Psychopharmacology
Volume: 239(2)
Pages: 525-531
DOI
Peer Reviewed
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