2021 Fiscal Year Research-status Report
ノンコーディング領域と中間サイズの変異に着目した精神疾患の遺伝要因解明
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21K07543
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
久島 周 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (00732645)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 自閉スペクトラム症 / ノンコーディング領域 / 構造変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
双極性障害(BD)、統合失調症(SCZ)、自閉スペクトラム症(ASD)の3疾患を対象として、ノンコーディング領域(すなわち、タンパク質をコードする遺伝子を含まない領域)のゲノムコピー数バリアント(CNV)が各疾患の病因に関与するかどうか、遺伝統計学的に検討を行った。まず、BD患者1818例、SCZ患者3014例、ASD患者1205例および健常者2671例(CONT)を対象に、高解像度アレイCGHを用いて得られたCNVデータについてquality controlを行い、頻度が1%以下の稀なCNVを得た。ノンコーディング領域のCNVの3疾患への関与を検討するため、ここでは特に遺伝子発現調節領域であるエンハンサー領域およびプロモーター領域に着目し、患者CNVが集積するか統計学的に検討した。 ノンコーディング領域の規定は、公開されているデータベースの情報に基づいて行った。具体的にはエピゲノム情報のデータベースであるENCODE、Roadmap Epigenome、 PsychENCODEプロジェクトから、複数の脳組織におけるエンハンサー領域およびプロモーター領域などの遺伝子発現調節領域を規定した。得られた遺伝子発現調節領域と、CNVデータを照合し、調節領域との重複塩基長としてデータ化した。この重複塩基長と各精神疾患との関連を、ロジスティック回帰モデルを用いて評価したところ、10種類の脳領域(前尾状回、帯状回、胚軸、海馬中央部、下側頭葉、黒質、背外側前頭葉皮質、脳角状回、女性胎児脳、男性胎児脳)における調節領域がSCZとASDと有意に関連することを見出した。以上の結果から、脳組織で活性をもつ遺伝子発現制御領域のCNVも精神疾患発症に寄与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BD、SCZ、ASDの3疾患を対象として、ノンコーディング領域に存在する頻度の稀なCNVの意義について、予定通り解析を行った。その結果、10種類の脳領域(前尾状回、帯状回、胚軸、海馬中央部、下側頭葉、黒質、背外側前頭葉皮質、脳角状回、女性胎児脳、男性胎児脳)におけるエンハンサー領域あるいはプロモーター領域の遺伝子発現調節領域がSCZとASDのリスクと有意に関連することを見出した。従って、予定通り順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度に引き続き、解析サンプル数を増やして、ノンコーディング領域のCNVについて、病態における意義について検討する。加えて、近年利用可能になったロングリード・シーケンサー技術を用いたゲノム解析を行う。従来の解析法(ショートリード・シーケンサーによる解析やアレイCGH)では、小規模バリアント(一塩基変異やINDEL)と大規模バリアント(50kb以上のCNV)の検出は可能であるが、中間サイズ(1-50 kb)の構造バリアント(挿入、欠失、重複、転座、逆位、縦列反復伸長)の検出は技術的に困難であった。したがって、ロングリードシーケンス解析を行い、発症リスクに関わる中間サイズの構造バリアントを同定することを目指す。
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