2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the molecular mechanism of the decline in nerve system function by the glycation stress
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21K07555
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
堀内 泰江 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (00548985)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 統合失調症 / iPS細胞 / アストロサイト / カルボニルストレス / 酸化ストレス / 薬剤代謝酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の代謝系は相互に密接に関連し体内の恒常性を保つ。脳においても例外ではなく神経細胞やグリア細胞は様々な代謝系を通じ互いに連携し脳の恒常性を維持し、ヒト特有の感情、思考など脳の高次機能に重要な役割を果たしていると考えられている。グリア細胞の一つであるアストロサイトは脳を構成する細胞の中で大きな割合を占め、脳機能亢進時のエネルギー産生基質として、神経細胞と代謝プロセスにおいて相互依存関係を介して脳の恒常性の維持に重要な役割を果たしている。このことを考慮すると、脳における細胞間の代謝・恒常性維持機構という新しい視点からの研究が精神疾患病態解明に必要である。近年、精神疾患の病因においても代謝経路の破綻が病態生理の一つであると示唆されているが、精神疾患に起因する患者由来脳神経細胞の代謝について解析した例は未だない。 本研究では、統合失調症の一部にカルボニルストレスを呈する一群に着目し、統合失調症患者由来ニューロン、アストロサイトを用い、ニューロン-グリア間の代謝系の異常が引き起こす障害のメカニズムに焦点を当て、統合失調症患者の代謝の異常とカルボニルストレス代謝関連の脆弱性仮説を検証し、統合失調症分子病態基盤解明を目的として進めている。 これまでの解析で、患者または健常者由来末梢血より単離したT細胞を用いてiPS細胞を樹立し、簡便に神経細胞、アストロサイトへ分化誘導可能な患者由来神経幹細胞ライブラリーを作製し、解析環境を整えた。 本年度は、カルボニルストレスを呈する患者の遺伝子解析を中心に進めた。患者由来アストロサイトに終末糖化産物が多く蓄積していることがこれまでの解析で明らかになっているが、それらの原因として薬物代謝関連遺伝子変異の影響が示唆される結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り患者由来アストロサイトの解析が進んでおり、計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、カルボニルストレスを呈する血縁者症例由来のゲノム解析を更に進め、カルボニルストレスが蓄積しやすい脆弱性に関連する遺伝子変異検出を行う。患者固有の遺伝子変異セットが終末糖化産物蓄積にどのように影響を及ぼすのか、分化誘導した患者由来アストロサイトを用い機能解析を行う。更に、遺伝子発現解析等により終末糖化産物蓄積によって影響を受ける分子パスウェイの解析を進める。
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Causes of Carryover |
学会や会議がオンライン化したため出張の旅費が大幅に削減となった。残額は次年度に繰り越し、患者由来細胞のゲノム解析と論文化のための費用に充てる予定である。
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